労務経営ブログ

障害者雇用の新しいステージへのステップアップの考え方

企業の障害者雇用を巡る状況は、ここ数年で大きな変化を迎えています。法定雇用率の引き上げが進む中、多くの企業は義務に対応すべく障害者の採用に力を入れているものの、実際の現場ではさまざまな問題が発生しています。これまでは障害者に対して、単純作業や補助的な業務を割り当てるケースが一般的でしたが、現在のような人手不足の状況では、それでは企業のニーズに十分に応えられないという課題が浮き彫りになっています。

まず障害者雇用に取り組む企業が直面する最大の問題のひとつは、障害者が本当に「活躍できる」職場を提供できていない点といわれます。法的義務を果たすために採用されたものの、実際には従業員がその能力を発揮できず、結果的に労働力として期待通りに機能しないケースが多くみられます。この状況は障害者にとっても、企業にとっても不満を生む原因となり、結果的に離職率の高さや職場内の不協和音を生じさせる要因ともなっている原因となります。

さらに、現場においては障害者に対するハラスメントが問題化するケースも見られます。特に「障害者は権利ばかり主張している」といった偏見や誤解が蔓延しがちであり、障害者が労働の場で十分に受け入れられていない現状がみられます。これは単純に義務感から障害者を雇用するだけで、企業全体として障害者を支援する姿勢が不十分であることが背景にあるといえます。

また、障害者の雇用が単なる義務の履行として行われていることも問題です。雇用される側が単純作業や雑務に回され、能力が十分に活用されていないため、仕事に対するやりがいや成長機会を感じられないことが少なくありません。これにより働く意欲を失う障害者が増加し、企業側も期待していたような生産性向上や組織貢献が実現されないという悪循環に陥ります。

このような現状に加え、企業が障害者の能力や特性を正確に把握できていないことも問題です。面接や採用試験だけでは、応募者の性格や体調、実際に働く上での適応力を十分に評価することは難しいです。結果として、採用後に企業側と障害者との間で食い違いが生じ、円滑な業務遂行が妨げられるケースが増えている現状があるのです。これにより、採用の際に企業が抱えるリスクが高まり、結果的に障害者雇用の推進が滞ってしまうことになります。

このように障害者雇用における問題は多岐にわたり、単なる数値目標を達成するだけでは、企業も障害者も真のメリットを享受できない状況にあると言えます。企業が障害者を単なる労働力の一部としてではなく、全従業員と同等に能力を発揮できる存在として受け入れ、彼らが生き生きと働ける環境を提供することが、今後の課題として求められているのです。

〇新しいステージとは?
現状のまま障害者雇用を進めていくと、企業には深刻なリスクが待ち受けています。法定雇用率の達成に焦点を当てて、ただ採用するだけでは、企業の成長や人材戦略にマイナスの影響を及ぼす可能性が高いのです。特に人手不足が加速している現代において、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことができなければ、組織全体の生産性が落ち、競争力を失ってしまうリスクがあります。あなたの会社は障害者雇用を「義務」として行うだけで終わらせていないでしょうか?

もし採用した障害者が十分に力を発揮できない環境が続けば、職場全体に不満が広がり、チームの士気が低下する可能性があります。職場の他の従業員も、「自分たちと同じように貢献していない」と感じ、結果的に職場の雰囲気が悪化する原因となります。これは単に個々の問題ではなく、企業全体のパフォーマンスに影響を与え、長期的な成長を阻害する大きな要因になりかねません。

さらに障害者本人にとっても「活躍できていない」という感覚は、強いストレスやフラストレーションの原因に繋がります。彼らが企業に貢献できるのに、適切な職場環境が整備されていないことでその力を発揮できない場合、自己肯定感が低下し、最終的には離職に繋がってしまう可能性があります。こうした状況が繰り返されると、企業は何度も採用と教育にリソースを割かざるを得なくなり、労働力の安定供給が難しくなる悪循環になります。

つまり、法定雇用率を満たしているだけでは、もはや十分ではない時代になっているのです。企業が今求められているのは、障害者の能力や特性を深く理解し、それを活かせるポジションを提供することです。これを怠ると表面的には「雇用率」をクリアしていても、実際には全く価値を生み出せていないことになりかねません。障害者雇用が企業にとって真の意味で利益を生むためには、ただ雇用するだけではなく、採用した障害者が「活躍」できる環境を整えなければならない時代に変化しているのです。

そして人手不足の中、企業が抱える大きな問題は、この機会をどう活かすかとなってきています。従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことができれば、障害者も非障害者も共に企業の成長に貢献する重要な戦力に繋がります。しかし現状のように障害者がただ「数合わせ」のために採用され、能力が発揮されないまま放置されるようでは、企業にとっても障害者にとっても不利益しか生じません。

このまま、従来通りの障害者雇用に甘んじていると、未来の競争力を失いかねないこととなります。採用後の適応に失敗することで、余計なコストやトラブルが発生し、職場全体が混乱することもあるでしょう。そんな事態を避けるためには、今こそ企業は自らの障害者雇用の在り方を根本的に見直し、真に実力を発揮できる環境を作るべきじだいとなっているのです。

こうした取り組みは、単に「障害者を助ける」という慈善的な発想ではなく、企業にとっても経営戦略の一環として重要です。活用できる人材を活かさないことは、企業の将来にとって大きな損失であり、これは決して他人事ではないということを理解しましょう。

〇新しいステージに向けて
こうした新しい障害者雇用の問題に対する解決策として、まず企業が取り組むべきは、障害者の「雇用」ではなく「活躍」にフォーカスを当てた雇用戦略の見直しとなります。単に法定雇用率を達成するために採用するのではなく、採用後にどうすればその人材が最大限のパフォーマンスを発揮できるかを考え、長期的な視点で障害者の雇用プロセスを再構築することが求められます。

まず一つ目の具体的な対策としては、採用前の段階で、障害者の特性や能力をより深く理解するための長期インターンシップや職場見学制度を導入することが有効となります。インターンシップを通じて応募者がどのような業務に適性があるか、職場環境にどの程度適応できるかを企業側がしっかりと確認することができるようになります。これにより採用後のミスマッチを防ぎ、企業と障害者の双方にとって満足度の高い雇用関係を築くことが可能となる道筋がつけられるようになります。

二つ目の対策として、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の強化が挙げられます。採用後に研修を通じて障害者が実際に業務をこなす中で、彼らの強みや改善点を見極め、適材適所で業務を割り振ることで、よりスムーズに組織にフィットさせることができることとなります。これによって障害者自身も自分の仕事に対する理解が深まり、自信を持って業務に取り組むことができるようになります。特にマニュアル的な指導ではなく、個々の障害者の特性に応じた柔軟な対応が鍵となります。

また障害者の能力を最大限に引き出すためには、研修制度の充実も欠かせません。業務に必要なスキルを身に付けるための社内研修の他、外部の専門機関を活用したトレーニングプログラムも有効となりますが、取り入れている企業は少ないです。これにより障害者が特定のスキルを習得するだけでなく、職場全体が障害者を支援する文化を醸成することにも繋がります。特に障害者を直接指導するマネージャーや同僚に対しては、障害に関する理解を深めるための研修を定期的に実施することが重要です。これにより、障害者が周囲からの理解やサポートを受けやすくなり働きやすい職場環境が整いますし、マネージャーや同僚にも最新の情報が提供されるため不安の解消に繋がることとなります。

これ以外に、企業全体で障害者が「特別な存在」としてではなく、他の従業員と同様に扱われ、平等に評価されるシステムを導入することも大切です。評価基準を明確にし、障害者が努力すればその成果が適切に評価される仕組みを整えることで、障害者自身のモチベーションを維持し、組織への貢献度を高めることができます。こうした評価システムが整備されると、障害者が「自分も企業の一員として必要とされている」という意識を持ち、積極的に業務に取り組む姿勢を育むことができます。

また障害者雇用を推進する際には、外部の専門家やコンサルタントの支援を受けることも検討するとよいでしょう。障害者雇用に特化した社会保険労務士やコンサルタントと連携することで、企業内部では把握しきれない法的なアドバイスや、障害者の適材適所の配置に関する助言を受けることができます。当事務所でも、こうした企業の悩みに対して具体的な支援を提供しており、特に障害者の能力を最大限に発揮させるための職場環境の整備や、評価制度の導入に関するコンサルティングを行っていますので是非ご相談ください。

最終的に、障害者雇用を単なる「義務」ではなく、企業の戦略的な「成長のチャンス」として捉えることが重要となります。適切な環境整備とサポート体制を整えることで、障害者も非障害者も共に成長し企業全体が利益を享受することができるのです。

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