労務経営ブログ

障害者雇用における配置転換の課題を解決するためのアプローチ

障害者雇用を成功させるには、企業が配置転換の負担を理解し、社員が安心して働ける環境を整備することが重要です。解決策の一つとして、配置転換を行う際の「慎重な意思決定」が挙げられます。人材の成長を期待しての配置転換であっても、障害を持つ方にとっては新しい環境への適応が大きな心理的・実務的な負担になりかねません。したがって企業が障害者雇用を進める際には、配属先や上司の理解度、仕事の内容など、移動先の環境に対する十分な配慮が求められます。

以下に、具体的な解決策をいくつかご紹介します。
1. ジョブローテーションを見直し、柔軟な配置転換方針を導入する
企業はまず、障害者に対して柔軟な配置転換方針を取り入れることが重要です。例えば定期的なジョブローテーションが必須の業務体制ではなく、障害者に適したポジションや業務内容に定着させ、職務に集中できる環境を提供する方法が効果的です。これにより配置転換の頻度が減り心理的な負担が軽減されるため、安心して長期間働ける基盤が整います。

ジョブローテーションの見直しは、一般社員に対してもメリットがある可能性があります。成長のための異動は確かに必要なケースもありますが、同じ職務で安定的にスキルを磨き、専門性を高めたいというニーズもあるため、配置転換の柔軟性は職場全体の安定にもつながるでしょう。

2. 上司や同僚の理解を深めるための研修プログラムを実施する
障害者が新しい部署に適応しやすくするためには、上司や同僚の理解が欠かせません。そのため社内で障害に関する研修を行い、障害者雇用への理解を深めることは重要です。管理職を対象にした研修プログラムの導入は特に効果的で、障害特性に応じた指導方法やコミュニケーションのポイントを学ぶことで、業務の進め方がスムーズになるだけでなく障害者に対する偏見の解消にもつながります。

例えば、障害者がストレスを感じる場面やサポートが必要なポイントを上司が理解していれば、突発的な仕事の依頼を減らし障害に応じた適切なサポートがしやすくなります。このような研修によって、障害者が職場で孤立せずに働ける雰囲気が形成され、定着率の向上にも貢献するでしょう。

3. 職務内容の明確化とサポート体制の強化
障害者が業務に集中できるよう職務内容を明確化し、適切なサポート体制を構築することも有効です。職務内容を事前に細かく定義し、業務範囲や責任を明確にすることで、業務遂行時の不安を減らし、効率的に作業を進めやすくなります。

さらに業務遂行にあたって特別なサポートが必要な場合には、専門のサポートスタッフやアシスタントを配置することも検討しましょう。例えば、特定の障害に応じた機器やシステムの導入を行い、作業の効率化や負担の軽減を図ることも可能です。こうした体制が整っていると障害者が自信を持って仕事に取り組むことができ、業務においても高い成果を発揮できるようになります。

4. フォローアップ面談と継続的なサポート体制の整備
定期的なフォローアップ面談を実施し、障害者の方が抱える問題や不安を随時確認することも重要です。上司や人事担当者が定期的に面談を行い、業務上の課題やストレスがないかを確認することで、問題の早期発見と対策が可能となります。また部署異動や業務内容の変更が必要な場合には、本人の希望や適性を最大限に考慮し負担が最小限となるよう調整しましょう。

さらにこうしたフォローアップを通じて、個別のニーズに応じた柔軟な対応も可能になります。面談を行うことで、障害者の方が職場で抱えている課題に対し具体的な解決策を見出すことができ、働きやすい環境を提供し続けることが可能です。

5. 障害者雇用における専門家や外部リソースの活用
社内での対応に限界を感じる場合、外部の専門家や障害者雇用支援の機関と連携することも有効です。障害者雇用に詳しい専門家が提供するアドバイスは、社内の人事担当者が気づきにくい問題点の発見や改善につながり、配置転換や業務の見直しにおいても効果を発揮します。

障害者雇用支援機関では、障害者が働きやすい職場づくりのコンサルティングやサポートを行っており、実際に多くの企業で活用されています。こうしたリソースを活用することで、障害者が定着しやすい環境を構築するためのヒントや実践的なアドバイスを得ることができ、長期的な雇用の安定に大きく寄与するでしょう。

企業が障害者雇用を効果的に進めるには、単なる雇用率の達成ではなく、働きやすい環境づくりに焦点を当てた取り組みが必要です。

〇配置転換の見直しを必要とする企業とは?
配置転換をはじめとする働き方の見直しは、すべての企業にとって必要なものですが、特に以下のような状況に当てはまる企業にとっては、早急な取り組みが重要です。企業の特性や人材の状況によっては問題が深刻化する可能性があり、これに対する対策が早期の課題解決に結びつきます。

1. 大企業・組織内での人材移動が頻繁な企業
従業員数が多く、組織内での人材の流動性が高い大企業では、従業員の配置転換が常態化しているケースが多く見られます。特に部署異動やジョブローテーションを重視する企業においては、障害者を含むすべての従業員がその方針に従うことが当然とされる場合が多いです。こうした企業は、年次ごとの異動や定期的な配置転換が成長戦略の一環として組み込まれていることもあり、障害者の方が長期間同じ部署で安定して働くのが難しくなりがちです。

このような大企業こそ、ジョブローテーションの方針を柔軟に見直し、障害者に適した環境で業務を続けられる体制を整える必要があります。人材の成長に重きを置くのはもちろん大事なことですが、障害者にとっては配置転換が業務遂行の障害となる場合があることを認識し、適材適所の考え方を適用することが鍵となります。

2. ダイバーシティ推進を掲げ、女性・高齢者・外国人労働者が多い企業
ダイバーシティ推進を企業理念として掲げ、女性や高齢者、外国人労働者など、多様な人材を積極的に採用している企業では、障害者雇用に対しても同様に積極的であることが求められます。しかし多様な人材を採用する一方で、配置転換や業務の柔軟性において障害者の特性に対する配慮が不足している場合、離職のリスクが高まる可能性があるのです。

特に女性や高齢者、外国人といった多様なバックグラウンドを持つ人材は、一般的な社員と異なるニーズや適応力を持っていることも多く、これに対応した配置方針が重要です。多様性を尊重する職場づくりを目指す企業にとって、障害者の配置転換に配慮した柔軟な対応ができるようになることは、社内の風土や文化に一貫性を持たせ、離職を防ぎ、安定的な雇用を実現するうえで非常に重要な取り組みとなります。

3. 障害者雇用に不慣れな中小企業やベンチャー企業
中小企業やベンチャー企業の多くは、これまで障害者雇用をあまり経験しておらず、十分なノウハウを持っていないことが多いでしょう。こうした企業では、障害者雇用において配置転換や業務の調整がなされず、結果として離職に至るケースが見られます。特に事業の成長過程にあるベンチャー企業は、組織の変動が多く人事体制が安定していない場合も多いため、障害者の配置転換に十分な配慮がなされないことが多いのです。

またベンチャー企業では、障害者の特性に応じた柔軟な働き方やサポート体制の構築が後手に回りがちですが、こうした企業こそ初期段階で障害者雇用に関するサポート体制を確立しておくことが重要です。障害者雇用に不慣れな中小企業やベンチャー企業であっても、適切なサポートを行えば障害者が安定して働ける職場を築き上げることが可能です。

4. 地方拠点が多く、部署や業務内容が拠点ごとに異なる企業
地方拠点を多く持つ企業や業務内容が各拠点ごとに異なる企業では、異動によって働く環境が大きく変わるため障害者の負担が増大しがちです。地方拠点に異動する際、環境に適応するためのサポートが不十分であると、障害者にとって大きな障壁となり離職のリスクが高まります。

このような企業にとっては、配置転換が必要な場合であっても障害者の方が業務内容や拠点に適応しやすいよう、事前の準備とサポート体制を整えることが求められます。たとえば、異動前に配属先の上司や同僚と十分なコミュニケーションの場を設けたり、サポートスタッフを配置したりすることで新しい環境への適応を支援することが可能です。

5. 社員の定着率が低く、頻繁に離職が発生している企業
社員の定着率が低い企業においては、働きやすい環境が整っていないことが原因で、結果的に障害者が早期離職する傾向も見られます。頻繁な離職が発生している企業は、障害者に限らずすべての社員が安心して働ける環境の整備が必要です。特に配置転換に配慮がない場合、障害者の方が精神的な負担を抱えてしまい離職に至るケースが増加します。

このような企業では、配置転換の見直しとともに、働きやすい環境づくりが重要な課題です。配置転換の際に十分な事前準備を行い、障害者の特性に応じた対応ができる体制を確立することで、離職率の低下と定着率の向上が期待できるでしょう。

配置転換の課題を抱えているすべての企業に共通するのは、障害者に対する配慮がまだまだ不足しているという点です。企業が抱える人材の多様性を尊重し、長期的に安心して働ける職場を実現するためには、障害者の特性に合わせた柔軟な配置転換方針の導入が求められます。

〇障害者雇用における配置転換の見直しに向けて、今すぐ始められる具体的アクション
ここまで、障害者雇用における配置転換がもたらす課題とその影響、そしてそれに取り組むべき企業の特性について挙げてきました。ではこれらの課題を解決し、障害者が安心して働ける環境を実現するために、企業は具体的にどのようなアクションを取るべきでしょうか。今すぐ始められる具体的なステップを以下にまとめました。

1. 配置転換方針の見直しと明確なガイドラインの策定
まず取り組むべきは配置転換に関する企業方針を見直し、特に障害者雇用においては柔軟な配置転換の運用を検討することです。従来のジョブローテーションを障害者にそのまま適用するのではなく、障害者が業務に集中しスキルを積み重ねられるよう、原則として長期的に同一のポジションで働ける選択肢を提供するのが理想的です。

配置転換を行う際には、業務変更の影響や新しい環境に適応するためのサポート体制があるかを確認し、障害者が安心して異動できる体制を整えるべきです。そのためには、異動の可否や異動を行う際のプロセスに関する明確なガイドラインを策定し、企業全体で共通認識を持つようにすることが重要です。

2. 管理職向けの障害者雇用研修の実施
上司の理解が不足していると、配置転換が障害者にとって予想以上の負担になることがよくあります。そのため管理職を対象とした障害者雇用に関する研修を定期的に行い、障害のある社員に対する理解を深める機会を設けましょう。特に、障害特性に応じたコミュニケーションや指導方法について学ぶことで、管理職の配慮が行き届き、障害者にとって働きやすい職場環境が実現しやすくなります。

また、障害者の特性に関する基礎知識だけでなく、配置転換や業務変更時に配慮すべきポイント、ストレス軽減のための対応方法など、実務に直結する内容を研修に盛り込むことでより実践的な知識とスキルが身につきます。さらに研修だけでなく、管理職同士での意見交換や、障害者雇用の成功事例の共有を行うと良いでしょう。

3. 配置転換におけるフォローアップ面談とアフターケア体制の確立
配置転換の際には、異動が障害者に与える影響を見過ごさないよう、事前・事後のフォローアップ面談を必ず実施しましょう。面談において、業務内容や環境変化に伴う不安、困難な点についてヒアリングを行い、必要に応じてサポートを提供します。面談は異動直後だけでなく、数ヶ月後にも実施することで環境に適応するための時間とサポートを十分に確保できるようにします。

また配置転換後にはアフターケアとして、同僚や上司からのサポートが適切に行われているかを確認し、障害者が孤立しないよう配慮を行います。サポート体制が整っていると、障害者にとって安心感が生まれ職場定着率の向上にもつながるでしょう。

4. 専門家や外部リソースの活用によるサポート体制の強化
障害者雇用の経験が少ない企業や配置転換に不安がある場合は、外部の専門家や障害者支援機関の協力を得ることも有効です。たとえば障害者雇用の専門家からのアドバイスや、各地域での障害者雇用支援機関によるサポートは、配置転換のプロセスにおいて大きな力となります。こうした外部のリソースを活用することで、障害者雇用のノウハウを社内に定着させ、企業内での支援体制をより一層充実させることができます。

また支援機関を活用することで、障害者のニーズや適性に応じた配置転換の計画を立てることができ、配置転換が障害者にとってストレスとなる状況を最小限に抑えることができます。こうした外部リソースの活用は、特に障害者雇用に不慣れな企業にとって、心強いパートナーとなるでしょう。

5. 障害者雇用に関する課題を専門家に相談し、支援を受ける
障害者雇用を適切に進め、長期的な雇用を実現するためには、専門的な支援が必要です。社会保険労務士法人東京エルファロは、障害者雇用の実務に精通した専門家として、企業の障害者雇用の課題を共に解決するパートナーとしてサポートを提供しています。具体的には、配置転換における適切なガイドラインの作成や、フォローアップの実施方法についてのアドバイス、そして必要なサポート体制の整備など、実務に役立つ具体的な支援を行っています。

障害者雇用の現場では、一社一社が抱える課題が異なります。たとえば、「どのような職務が障害者に適しているのか」「配置転換を行う際の注意点」「障害者が長く働ける環境をどのように整備するか」といった企業特有の課題についても、個別に対応し、適切な解決策を見つけ出します。また、現場の管理職や人事担当者に対しての研修を通じ、障害者雇用の課題解決のための知識やスキルを社内に蓄積するお手伝いをしています。

障害者が安定して働ける環境を整えることは、企業にとっても労働力の安定や職場の多様性向上につながる重要な投資です。これから障害者雇用を進めようとする企業も、すでに取り組んでいる企業も、配置転換に関する不安や課題があれば、ぜひ一度私たちにご相談ください。

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