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障害者が働きやすい職場を作るには?関東圏のポイントを社労士が解説

近年、障害者の社会参加を促進するための取り組みが全国で進められています。その背景には、障害者雇用促進法の改正や法定雇用率の引き上げといった法律の整備が挙げられます。しかし、法律が整備されたからといって、全ての企業で障害者が働きやすい環境が実現されているわけではありません。特に関東圏では、多様な業種や規模の企業が集まり障害者雇用の取り組みにおいても課題が山積しています。
障害者が働きやすい職場環境を整えることは、法的義務を果たすだけでなく、企業にとっても重要なメリットをもたらします。多様性(ダイバーシティ)の推進や障害者が持つ独自のスキルを活かすことで、組織全体の生産性や企業価値を高めることが可能です。その一方で、職場環境の整備には具体的な知識や準備が求められるため、企業単独で進めるには限界がある場合も少なくありません。

〇障害者雇用促進法や法定雇用率と関東圏が直面する課題
障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図るための基本的な枠組みを定めた法律で、企業には法定雇用率の達成が義務づけられています。2024年度には、民間企業における法定雇用率が2.5%に引き上げられ、2026年7月には2.7%に引き上げられます。現在の数字では、従業員100人以上の企業であれば、最低でも2〜3名の障害者を雇用しなければならないことを意味します。
しかし、現状では多くの企業がこの基準を満たしていないのが実態です。厚生労働省のデータによると、法定雇用率を達成している企業の割合は約50%に留まっています。さらに、法定雇用率をクリアしている企業の中にも、障害者が長く働き続けられる環境が整っていないケースが多く見受けられます。形だけの雇用では、法的義務を果たしたとしても障害者本人にとっても企業にとっても満足のいく結果にはなりません。

関東圏は、日本経済の中心地として大小さまざまな企業が集中しています。しかしこれだけ多くの企業があるにもかかわらず、障害者雇用が進まない理由は何でしょうか?その背景には、次のような課題があります。
1つ目は、「合理的配慮」の理解不足です。合理的配慮とは、障害者が職場で働く上での障壁を取り除くために企業が行うべき具体的な措置を指します。しかし企業側がどのような対応を求められるのか分からず、結果として必要な配慮を怠ってしまうケースが少なくありません。
2つ目は、「職場内の理解不足」です。障害者雇用は企業全体で取り組むべき課題ですが、従業員同士のコミュニケーション不足や偏見により障害者が孤立してしまう問題も見られます。特に関東圏のように人材の流動性が高い地域では、職場のチームワークが十分に形成されず、障害者が安心して働ける環境作りが遅れる傾向があります。

〇障害者が働きやすい職場を作るための基本ステップ
障害者が安心して働ける職場を作るには、法律を順守しながら実際に働きやすい環境を整備することが重要です。これは単に法律の基準を満たすだけではなく、企業全体で障害者の理解を深め、継続的なサポートを行うことを意味します。ここでは、法律に基づく環境整備のポイントと、社内意識の向上に必要な取り組みについて解説します。

1.法律に基づいた環境整備のポイント
障害者を雇用する際には、障害者雇用促進法に基づき、労働環境を整えることが求められます。これには、雇用計画の策定や労働条件の見直しといった基本的な取り組みだけでなく、合理的配慮の実施も含まれます。以下に、具体的な基準作りのポイントを説明します。
(1)障害者雇用促進法を踏まえた基準作り
障害者雇用促進法では、一定規模以上の企業に法定雇用率を達成する義務が課されています。現在の法定雇用率は2.5%であり、従業員数が100人以上の企業であれば少なくとも2〜3名の障害者を雇用する必要があります。
しかし、法定雇用率を満たすだけでは不十分です。障害者が職場で能力を発揮し安心して働ける環境を整えるためには、就業規則の見直しや職務内容の調整が不可欠です。たとえば障害者が自分の特性に合った仕事を担えるように、業務内容を細分化したり、フレキシブルな勤務時間を設定するなどの工夫が必要です。

(2)労働条件の整備と合理的配慮とは
合理的配慮とは、障害者が他の従業員と平等に働けるように職場環境を調整する取り組みを指します。具体的には以下のような対応が含まれます。
・車椅子の使用を考慮した職場スペースの確保
・聴覚障害者のために、音声情報を文字情報に変換するシステムの導入
・精神障害者の負担を軽減するための業務量の調整やカウンセリングの実施
これらの取り組みを行うことで、障害者が直面する物理的・心理的なハードルを取り除くことができます。また、合理的配慮は企業側の負担を考慮した範囲で行えばよいとされていますが、具体的な配慮方法については専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

2.社内意識の向上と障害者理解の促進
障害者が職場で安心して働くためには、物理的な環境整備だけでなく従業員一人ひとりの意識向上も不可欠です。職場全体で障害者への理解を深め、協力して支える姿勢を育むことが長期的な成功につながります。
(1)従業員研修の必要性
従業員が障害者に対する正しい理解を持つためには、定期的な研修の実施が重要です。障害の種類や特性についての基礎知識を学ぶことで、無意識の偏見や誤解を減らすことができます。
たとえば、以下のようなテーマで研修を実施することが効果的です。
・障害者雇用に関する法律や制度の基礎知識
・障害者とコミュニケーションを取る際のポイント
・職場内での配慮がどのように障害者のパフォーマンス向上につながるか
また、実際に障害を持つ人が職場で直面した経験を共有する機会を設けることで、従業員がより深く理解を得ることも可能です。

(2)コミュニケーションの壁をなくす工夫
障害者が職場で孤立しないためには、日常のコミュニケーションが円滑に行える環境を作ることが大切です。特に言葉のすれ違いや配慮不足を防ぐためには、以下のような工夫が有効です。
・チームミーティングを定期的に開催し、仕事の進捗や困りごとを共有する場を設ける
・メールやチャットツールを活用し、言葉の行き違いを防ぐ
・障害者が安心して相談できる窓口やメンター制度を導入する
また、日常の中でちょっとした声かけや挨拶をするだけでも、職場の雰囲気が良くなり、障害者が働きやすい環境の形成につながります。

障害者が働きやすい職場を作るためには、法律に基づく環境整備と社内意識の向上の両輪で進めることが重要です。企業がこれらの取り組みを実践することで、障害者が能力を発揮できるだけでなく職場全体の多様性と生産性を高めることができます。特に社労士のような専門家と連携しながら進めることで、確実に効果的な環境整備が実現するでしょう。

3.関東圏での職場環境整備の具体例
障害者が働きやすい職場環境を整えることは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、多様性を活かした組織の成長にもつながります。特に関東圏は企業の集積地であり、障害者雇用を進める企業の事例が数多く存在します。

障害者雇用を進めるうえで、企業が取り組むべきポイントは「働きやすい環境づくり」と「個々の能力を活かす仕組みの構築」です。関東圏の企業では、こうした取り組みを実現し、成功を収めている事例がいくつもあります。以下に、代表的な取り組みを紹介します。
・働きやすさを実現した企業の取り組み
あるIT企業では、聴覚障害者が働きやすい環境を整えるために、全社員が手話を学ぶプログラムを導入しました。この取り組みにより従業員間のコミュニケーションが活性化され、業務の効率が向上しただけでなく、職場全体の雰囲気も良くなったといいます。また視覚障害者が働く職場では、読み上げソフトや音声入力システムを活用し業務の効率化と負担軽減を実現した事例もあります。
こうした成功事例に共通するのは、障害者の特性やニーズを丁寧に理解しそれに応じたサポートを提供している点です。また社員全体で障害者を支える意識が高まることで、職場全体の連帯感が強まるという効果も得られています。

・テレワークや柔軟な勤務形態の導入事例
関東圏では新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、多くの企業がテレワークを導入しました。この流れの中で、テレワークは障害者にとっても働きやすい環境を提供する有効な手段となっています。
例えば、身体障害を持つ社員が通勤の負担を軽減するために、在宅勤務を選択できるようにした企業では、生産性が向上し離職率が低下したという成果が報告されています。またフレックスタイム制を導入し、精神障害者が自分のペースで働ける環境を整えた事例もあります。こうした柔軟な働き方は、障害者だけでなく他の従業員にとってもメリットがあり、企業全体の効率化と満足度の向上につながります。

障害者が働きやすい職場環境を整えるには、成功事例を参考にしながら、具体的な課題を解決していくことが重要です。社労士の支援を受けることで、法的基準を守りながら、企業の実情に合った最適な環境整備を実現することができます。関東圏の企業が今後も積極的に障害者雇用に取り組むことで、地域全体の多様性と経済の活性化が期待されます。

〇障害者雇用における注意点と失敗しないためのコツ
障害者雇用は、法的な基準を守るだけではなく、長期的に障害者が働きやすい環境を維持することが求められます。しかし、注意を怠ると法的トラブルや職場内の問題が発生するリスクがあります。

1.法的トラブルを防ぐためのチェックポイント
障害者雇用を進める際に最も避けたいのが、法的トラブルの発生です。トラブルを防ぐためには、労働契約書や就業規則を整備し、ハラスメントの発生を防ぐための取り組みを行うことが必要です。以下に具体的なポイントを説明します。
((1)労働契約書の整備
障害者を雇用する際、労働契約書の内容を明確にしておくことは必須です。雇用条件や業務内容、合理的配慮の範囲について具体的に記載し、企業と従業員双方が納得したうえで契約を結ぶことが大切です。
例えば、以下のような内容を契約書に盛り込むと良いでしょう。
・勤務時間や休憩時間の調整に関する取り決め
・必要な配慮(例:バリアフリー設備や業務負担の軽減)についての詳細
・トラブルが発生した際の相談窓口の設置についての説明
これにより、雇用後に生じる誤解や意見の相違を未然に防ぐことができます。さらに、社労士に相談することで、法的要件を満たしつつ、企業の実情に合った労働契約書を作成することが可能です。

(2)ハラスメント防止策
障害者が働きやすい職場を実現するためには、ハラスメントを防ぐ取り組みも重要です。特に無意識の偏見や配慮不足が原因で、障害者が職場で孤立したり、不快な思いをしたりするケースを防ぐ必要があります。
具体的な防止策としては、以下の取り組みが有効です。
・ハラスメントに関する全従業員への研修の実施
・障害者と接する際の適切な言葉遣いや対応方法について学ぶ機会の提供
・トラブル発生時に速やかに対応できる専用の相談窓口の設置
これらの対策を講じることで、障害者が職場で安心して働ける環境を作り出すことができます。

2.職場環境改善を続けるためのPDCAサイクル
障害者雇用の取り組みを一時的なものに終わらせず、継続的に改善していくにはPDCAサイクルの活用が効果的です。PDCAとはPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の流れを繰り返す手法で、企業の職場環境を進化させるための重要な仕組みです。
障害者が抱える課題や職場環境に対するニーズは、時間の経過とともに変化することがあります。そのため、職場環境を定期的に見直し、改善策を取り入れることが重要です。
例えば、次のような具体的な行動が考えられます。
・障害者からのフィードバックを定期的に収集し、職場環境に反映させる
・新しい技術や設備(例:ITツールやバリアフリー機器)を導入し、業務効率を向上させる
・職場全体での定期的なミーティングを実施し、障害者が意見を発信できる機会を作る
このように継続的な見直しを行うことで、障害者が安心して働き続けられる職場が実現します。

障害者雇用における注意点を押さえ、失敗しない取り組みを実現するためには、法的な整備と職場環境の継続的な改善が欠かせません。このような取り組みは、障害者の安心感を高めるだけでなく、企業の成長や社会的評価の向上にもつながるでしょう。

〇障害者が活躍する職場を目指すために必要な視点
障害者雇用の成功には、職場全体で「共生」の意識を育むことが重要です。企業が障害者を雇用する際に特に重視すべき視点を以下に挙げます。
1.障害者の個別ニーズを理解する姿勢
障害の種類や程度は人それぞれ異なり、画一的な対応では十分な成果を得ることはできません。そのため個々の従業員の特性やニーズをしっかりと理解し、適切な配慮を行うことが重要です。たとえば、身体的なサポートが必要な人には職場のバリアフリー化を進める一方で、精神的なサポートが必要な人にはカウンセリング体制を整えるなど、柔軟な対応が求められます。

2.職場全体の理解と協力
障害者が職場で安心して働くためには、同僚や管理職が障害について正しい知識を持つことが不可欠です。これには、全従業員への障害者雇用に関する研修の実施やコミュニケーションの取り方に関する教育が含まれます。また障害者が困難に直面した際、職場全体で支援できるような協力体制を構築することも大切です。

3.継続的な改善とPDCAサイクルの活用
障害者雇用の取り組みは一度整備すれば完了するものではありません。職場環境や従業員のニーズに合わせて、継続的に改善していくことが求められます。そのためには、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を活用し、計画、実行、評価、改善を繰り返す仕組みを導入することが効果的です。

4.社労士のサポートを受けながら、長期的な改善を混ざ士ませんか
障害者が活躍できる職場を作るには、企業単独では解決が難しい課題も多く存在します。こうした課題に対処するために、社労士の専門知識を活用することが有効です。
社労士の役割と具体的なサポート内容
社労士は、企業の障害者雇用におけるパートナーとして、以下のような支援を提供します。
・法令順守のサポート:障害者雇用促進法や労働基準法に基づき、就業規則や労働契約書の整備を支援します。
・職場環境の整備:合理的配慮を実現するためのアドバイスや、助成金の活用方法を提案します。
・トラブル対応:ハラスメントや労働条件に関するトラブルが発生した場合、迅速に対応策を提案します。
また、社労士は企業が気づきにくい課題を指摘し、解決に向けた具体的な改善策を提示する役割も果たします。これにより障害者だけでなく、従業員全体が働きやすい職場を作り上げることができます。
また、障害者雇用の取り組みを長期的に進めるには、社労士と連携して継続的な環境改善を図ることが重要です。たとえば、以下のような具体的な取り組みが考えられます。
・定期的な職場環境の見直し:障害者のフィードバックを収集し、改善ポイントを明確化する。
・最新情報の提供:法改正や新たな助成金制度についての最新情報を共有し、適切な対応を取る。
・従業員研修の実施:職場内の理解を深めるための研修やワークショップを定期的に開催する。
こうした取り組みを継続することで、障害者が安心して働けるだけでなく、企業全体の生産性やチームの連携力も向上します。

障害者が活躍する職場を目指すためには、個々の特性やニーズに応じた配慮を行うとともに、職場全体の理解と協力を深めることが不可欠です。また長期的な取り組みとして、PDCAサイクルを活用した継続的な改善が求められます。
これらを実現するうえで、社労士のサポートは非常に有効です。法的な整備や職場環境の改善、トラブル対応まで幅広く支援を受けることで、企業は安心して障害者雇用を進めることができます。障害者が能力を最大限に発揮できる職場づくりを目指し、社労士との連携を活用して持続可能な改善を進めていきましょう。ご興味がありましたら、ぜひ郷相談ください。

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