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障害者雇用の成功企業に学ぶ!関東近県での導入ポイント

近年、日本では障害者雇用が重要な社会課題の一つとして注目されています。企業には障害者を積極的に雇用する法的義務があり、同時に多様性を尊重する社会的責任も求められています。特に関東近県では、企業の障害者雇用への取り組みが進んでおり、成功事例も増えています。今回は、障害者雇用の法的義務と企業のメリット、さらに関東近県における最新の動向について詳しく解説します。

〇障害者雇用の法的義務と企業のメリット
障害者雇用促進法に基づき、一定規模以上の企業には障害者を雇用する義務があります。具体的には、従業員が40.0人以上の企業は、2.5%の障害者を雇用しなければなりません。この基準を満たさない企業には障害者雇用納付金の支払い義務が発生するため、法令遵守のためにも適切な雇用計画が必要です。

1.企業が障害者雇用を進めるメリット
法的義務を果たすだけでなく、企業にとっても障害者雇用には多くのメリットがあります。(1)企業イメージの向上
障害者を積極的に採用することで、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として評価され、企業のブランド価値が向上します。特に近年は、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが重視されており、ダイバーシティ経営の一環として障害者雇用が注目されています。
(2)職場の多様性促進と生産性向上
障害者を雇用することで、多様な視点が生まれ社内のコミュニケーションやチームワークが強化されるケースが多くあります。また、特定業務を障害者に任せることで、他の従業員が本来の業務に集中できる環境が整い、生産性向上につながることもあります。
(3)助成金や支援制度の活用
障害者雇用には、厚生労働省や自治体からの助成金が利用できます。たとえば、「特定求職者雇用開発助成金」や「障害者トライアル雇用助成金」などを活用することで、採用コストを抑えながら障害者雇用を進めることが可能です。

2.関東近県における障害者雇用の最新動向
関東近県では、企業の障害者雇用に対する意識が高まり、自治体や支援機関の連携も強化されています。
(1)テレワークの活用が進む
コロナ禍を経て在宅勤務やテレワークの導入が進んだことで、身体障害や精神障害を持つ方の働き方が多様化しています。特にIT企業や事務職を中心に、遠隔勤務が可能な職種で障害者雇用が広がっています。
(2)ジョブコーチ制度の活用が増加
企業内で障害者が定着するための支援として、「ジョブコーチ制度」が活用されています。これは専門の支援者が職場に入り、業務指導や職場環境の調整をサポートする制度です。関東圏では、この制度を導入して定着率を高める企業が増えています。
(3)障害者雇用の優良企業認定制度の活用
関東各県では、障害者雇用に積極的に取り組む企業を表彰する制度が導入されています。たとえば、東京都の「東京しごと財団」や神奈川県の「かながわ障害者雇用優良企業認定制度」など、企業の取り組みを評価する仕組みが整っています。

障害者雇用は、企業にとって法的義務であると同時に、企業価値の向上や職場の多様化などの大きなメリットをもたらします。特に関東近県では、テレワークの活用やジョブコーチ制度の普及など、障害者が働きやすい環境整備が進んでいます。今後、企業が障害者雇用を推進するためには、最新の動向を把握し適切な支援制度を活用することが重要です。

3.関東近県での障害者雇用成功事例
近年、多くの企業が障害者雇用の推進に取り組んでいますが、どのような施策が成功につながるのでしょうか。ここで、私が実際に障害者雇用のサポートをした事例をご紹介します。
(1)関東近県での障害者雇用成功事例|大手製造業A社の取り組み
関東近県の大手製造業A社が実践した、その具体的な取り組みと成功のポイントを解説します。
① 具体的な取り組み内容
大手製造業A社は、従業員1,000人以上を抱える企業で、主に自動車部品の製造を行っています。数年前から障害者雇用の拡大に取り組んでおり、特に「業務の細分化」と「支援制度の活用」に重点を置いた施策を実施しました。
・業務の細分化による負担軽減
A社では、これまで一人の作業員が複数の工程を担当していましたが、障害のある社員が無理なく作業できるように業務を細分化し、適材適所の配置を行いました。
例えば、以下のような工夫を取り入れています。
【組立工程の単純作業化】
小さな部品を扱う作業では、1つの工程をさらに細かく分け、短時間でできる作業を割り当て。
【色分けやマークを活用した作業指示】
工程ごとに色やマークを付けることで、視覚的に分かりやすい環境を整備。
【マニュアルや動画による研修の充実】
障害のある従業員が理解しやすいよう、簡潔なマニュアルや動画を活用し、研修を実施。
これにより、従業員の負担が軽減され作業の効率化が実現しました。
② 支援制度の活用による職場環境の改善
A社は、障害者雇用に関する支援制度を積極的に活用し職場環境を整備しました。
【ジョブコーチの導入】
専門のジョブコーチが定期的に訪問し、障害のある社員への業務指導や相談支援を実施。
【障害者雇用助成金の活用】
「特定求職者雇用開発助成金」などの支援を受け、職場環境のバリアフリー化や設備投資を実施。
【社内メンター制度の導入】
障害のある従業員をサポートするために、社内のベテラン社員が相談役となる制度を設けた。

これらの取り組みにより、障害のある従業員が安心して働ける環境を整えました。
② 成功のポイント
A社の成功には、以下の3つのポイントがありました。
【業務の適正配置と細分化】
障害のある従業員が無理なく働けるように業務を細分化し、適材適所の配置を行った。
【職場環境の整備と支援の活用】
ジョブコーチ制度や助成金を活用し、働きやすい環境を整えた。
【社内の理解促進と教育の充実】
障害者雇用に関する社内研修を行い、職場全体での受け入れ体制を構築した。

A社の取り組みは、障害者雇用を成功させるための良いモデルケースとなります。今後、他の企業もこの成功事例を参考に、より良い雇用環境を目指していくことが求められます。

(2)IT企業B社|テレワーク活用で障害者雇用を拡大
近年、テレワークの普及により障害者雇用の選択肢が大きく広がっています。特にIT業界では、オンライン環境を活用した柔軟な働き方が可能になり、多くの企業が障害者雇用を積極的に進めています。IT企業B社がテレワークを活用して障害者雇用を拡大し、その具体的な取り組みや成功の要因を解説します。
① 在宅勤務と合理的配慮の導入
・テレワーク環境を整備し、障害者の働きやすさを向上
B社は、ソフトウェア開発やウェブデザインを手がけるIT企業で、従業員数200名ほどの中堅企業です。数年前から障害者雇用に取り組んでいましたが、通勤が難しい障害者の応募が少ないことが課題となっていました。そこでテレワーク制度を整備し、在宅勤務ができる環境を構築しました。
具体的な取り組みとして、以下のような対策を実施しました。
【業務内容の明確化とオンライン管理の徹底】
障害のある社員が業務をスムーズに進められるよう、タスク管理ツール(TrelloやAsanaなど)を導入し、チャットツール(SlackやMicrosoft Teams)を活用し、円滑なコミュニケーションを確保しました。
【作業環境の整備と支援制度の活用】
在宅勤務に必要なPCやソフトウェアを会社負担で提供しました。導入には、「テレワーク助成金」を活用し、業務効率化ツールを導入しました。
【定期的なオンライン面談の実施】
メンタル面のサポートとして、定期的なオンライン面談を実施し、業務の進捗や体調を確認するようにしました。また、障害の特性に応じた業務調整を行い、無理のない働き方を実現するように面談の結果から工夫しました。
② 合理的配慮の導入で業務定着率を向上
B社は、障害のある社員が長く働けるように、合理的配慮の観点から以下の施策を取り入れました。
【業務時間の柔軟化】
体調に合わせて業務時間を調整できる「フレックスタイム制度」を導入しました。また、休憩時間の自由度を高め、疲れを感じた際に適宜休憩できる仕組みを整備し、自分で体調管理を出来るトレーニングを積むようにしました。
【障害特性に応じた業務割り当て】
聴覚障害のある社員には、主にチャットやメールを活用した業務を担当してもらいました。発達障害のある社員には、得意なプログラミング業務に集中できるように調整するなど、入社時に障害特性や環境を細かくヒヤリングして配慮しました。
【オンライン研修とメンター制度の導入】
新入社員向けのオンライン研修を実施し、業務の流れを分かりやすく解説するようにし事前研修環境の見直しをしました。また、先輩社員がメンターとなり、業務のサポートやメンタルケアを担当するようにして「誰に相談したらいいのか?」から自信で悩みを抱え込まないように注意しました。
③ 成功の要因
B社の障害者雇用が成功した要因は、以下の3つにまとめられます。
・テレワーク環境の整備に注力
在宅勤務でもスムーズに業務が進められるよう、PC・ソフトウェアの提供やオンラインツールの活用を徹底。これにより、障害のある社員が安心して働ける環境を実現しました。
・合理的配慮を取り入れた柔軟な働き方
フレックスタイム制度の導入や業務割り当ての工夫により、社員一人ひとりに合った働き方を実現し、定着率の向上につながりました。
・継続的なサポートと社内の理解促進
定期的なオンライン面談やメンター制度を導入することで、障害のある社員が孤立せず、安心して働ける職場環境を整えました。また、社内全体で障害者雇用の理解を深める研修も実施し、チームとしての受け入れ体制を強化しました。

B社の取り組みは、テレワークを活用した障害者雇用の成功モデルとして注目されます。在宅勤務が可能なIT業界ならではの特性を活かし、業務のオンライン化や柔軟な働き方を実現することで、障害のある社員の雇用を拡大しました。今後、他の企業もこの成功事例を参考にしながら、障害者雇用の促進に取り組んでいくことが求められます。

(3)小売業C社|ジョブコーチ制度で障害者雇用の定着率向上
障害者雇用において、採用後の「定着」が大きな課題となる企業は少なくありません。特に小売業では、接客や店舗運営などの業務が多岐にわたり、障害のある社員が職場環境に適応するまでに時間がかかることがあります。小売業C社が「ジョブコーチ制度」を活用し、障害者の定着率を向上させた成功事例を紹介します。
① ジョブコーチの活用方法
C社は、県内で複数の店舗を展開する中堅小売業者で衣料品や雑貨の販売を行っています。障害者雇用を推進する中で、採用後の離職率が高いという課題がありました。そこで、専門的な支援を受けながら定着を促すためジョブコーチ制度を導入しました。
・社内外のジョブコーチを活用したサポート体制
C社は障害のある社員が職場に適応しやすいように、社内ジョブコーチと外部ジョブコーチの両方を活用しました。
【社内ジョブコーチの設置】
既存の社員から希望者を募り、ジョブコーチ研修を受講しました。
障害のある社員の指導・フォローを担当し、業務習得を支援。
【外部ジョブコーチの活用】
地域の支援機関と連携し、専門のジョブコーチが定期的に訪問。
業務だけでなく、メンタル面のフォローも実施。
・障害特性に応じた業務アサインと職場環境の整備
ジョブコーチのアドバイスをもとに、障害の特性に応じた業務配置を行い、無理なく働ける環境を整えました。
【視覚的に分かりやすい業務指示】
店舗内の作業マニュアルをイラストや動画で説明。
作業手順を「チェックリスト化」し、進捗を確認しやすくした。
【適切な業務の割り当て】
コミュニケーションが得意な社員はレジ業務を担当。
集中力が求められる業務(商品整理・値札付けなど)は、個別作業を優先。
【職場の理解促進】
障害者雇用に関する社内研修を実施し、従業員全体の意識向上を図った。
② 成功の秘訣
1. ジョブコーチの継続的なサポート
ジョブコーチは、入社後の短期間だけでなく、継続的に支援を提供しました。定期的な面談を実施し、業務の悩みや困りごとを聞き取り、必要に応じて業務内容を調整しました。
2. チームでの受け入れ体制の強化
C社ではジョブコーチだけでなく、職場全体で障害者を支援する文化を醸成しました。例えば障害のある社員が困っているときに周囲の従業員がサポートできるよう、定期的なミーティングを開催し、意見交換を行いました。
3. 小さな成功体験の積み重ね
障害のある社員が自信を持って働けるよう、小さな成功体験を積み重ねる仕組みを取り入れました。例えば最初は簡単な作業からスタートし、徐々にできることを増やしていくことで、業務に対する意欲を高めました。

C社の取り組みは、ジョブコーチ制度を活用しながら障害者が長く働ける環境を整えた好事例です。社内外のジョブコーチを活用し、適切な業務の割り当てや職場の理解促進を行うことで定着率の向上につながりました。今後、他の企業もこの成功事例を参考にしながら、障害者雇用の安定化を進めていくことが期待されます。

〇関東近県の企業が障害者雇用を成功させるためのポイント
障害者雇用を成功させるためには、適切な職場環境の整備と合理的配慮が欠かせません。企業が障害のある従業員を戦力として活用するには、働きやすい環境を整えるとともに各種助成金や支援制度を活用することが重要です。
(1)職場環境の整備と合理的配慮の重要性
① 具体的な配慮例(バリアフリー、業務の適正配置など)
障害者が安心して働くためには、職場環境の整備が不可欠です。企業が取り組むべき主な合理的配慮の例を以下に紹介します。
・バリアフリー対応の強化
物理的環境の改善
車椅子利用者のためにスロープやエレベーターの設置を検討する。
トイレや通路を広く確保し、移動しやすい設計にする。
聴覚障害者向けに、社内放送を字幕やテキストで通知するシステムを導入を検討する。
・業務の適正配置と業務内容の工夫
【障害の特性に応じた業務の割り当て】
例えば視覚障害のある社員には、音声読み上げソフトを活用したデータ入力業務を担当してもらう。
精神障害のある社員には、ストレスの少ない業務(例えば、静かな環境での資料整理や検品作業など)を任せる。
肢体不自由の社員には、長時間の立ち仕事を避け、座って作業できる職務を用意する。
【マニュアルやサポート体制の整備】
業務内容を視覚的に分かりやすくするため、イラスト付きのマニュアルを用意する。
仕事の流れを分かりやすくするために、タスク管理ツール(TrelloやAsanaなど)を活用する。
ジョブコーチ制度を利用し、業務習得のサポートを行う。
② 柔軟な勤務形態の導入
【時短勤務やフレックスタイムの活用】
通院などが必要な社員には、時短勤務やフレックスタイム制を適用し、働きやすい環境を提供。
【テレワークの導入】
身体的な負担が大きい通勤を避けるため、リモートワークを活用。特にIT業務や事務作業などに適用しやすい。

これらの合理的配慮を行うことで、障害のある社員が長く安心して働ける環境が整います。
関東近県の助成金・支援制度の活用
障害者雇用には、多くの支援制度や助成金を活用することができます。関東近県の企業が利用できる主な制度を紹介します。

(2)国の助成金制度
厚生労働省では、企業が障害者を雇用する際に利用できる助成金を多数用意されています。
・特定求職者雇用開発助成金
障害者を新たに雇用した企業に対して、一定期間、賃金の一部を助成するもので、申請することが多い助成金となり、中小企業では最大240万円、大企業では最大120万円の助成を受けられます。
・障害者雇用安定助成金(職場適応援助コース)
障害者が職場に適応するためにジョブコーチを活用した場合に助成されます。企業がジョブコーチを配置した場合、1人あたり最大72万円の助成を受けられるので、ジョブコーチの活用を検討する場合には活用してもらいたい助成金です。
・テレワーク助成金
障害者の在宅勤務を支援するための設備投資(PC・ソフトウェア・通信環境整備など)に対する助成です。

(3)地域ごとの支援制度(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県など)
関東近県では、各自治体が独自の障害者雇用支援制度も充実しています。
・東京都:「東京都中小企業障害者雇用支援助成金」
都内の企業が障害者を採用し、定着支援を行う場合に助成されます。
・神奈川県:「かながわ障害者雇用優良企業認定制度」
障害者雇用に積極的な企業を認定し、企業イメージ向上を支援します。
・千葉県:「障害者雇用推進事業」
県内企業に対し、障害者雇用に関する相談窓口や研修の提供しています。
・埼玉県:「障害者雇用トライアル制度」
企業が障害者を一定期間試験的に雇用できる制度です。

これらの制度を活用することで、企業は負担を軽減しながら障害者雇用を進めることが可能になりますので、活用を検討してみましょう。

障害者雇用を成功させるためには、職場環境の整備と合理的配慮が不可欠です。企業はバリアフリー対策や業務の適正配置、柔軟な働き方を導入することで、障害者が働きやすい環境を作ることができます。また関東近県には多くの助成金や支援制度があり、これらを積極的に活用することで、経済的な負担を抑えながら障害者雇用を推進できます。
今後、企業が障害者雇用を進める際には、適切な支援制度を利用しながら職場環境の改善に努めることが重要です。障害者が長く安心して働ける職場を作ることは、企業にとっても大きなメリットとなります。企業全体で意識を高め、より良い労働環境を整えていきましょう。

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