労務経営ブログ
障害者を雇用する義務はどのような企業に課されているのか?対象企業と義務内容を徹底解説
企業が人材確保を行う中で、障害者雇用に関する義務についての関心が高まっています。特に「自社は障害者雇用の義務があるのか?」「何人以上の企業が対象になるのか?」といった疑問は、多くの人事担当者や経営者が抱えるテーマです。本記事では、障害者雇用に関する義務の内容や対象となる企業の基準について、法律の根拠とともに詳しく解説します。
障害者雇用の義務がある企業とは?
結論から言うと、常時雇用する労働者が「43.5人以上」の企業には、障害者雇用の義務が課されています。これは「障害者雇用促進法」によって定められた制度で、法定雇用率に基づいて障害者を一定数以上雇用する義務があります。
企業規模ごとの対象基準:
– 民間企業:43.5人以上の労働者を常時雇用する場合に義務あり
– 国・地方公共団体:すべて対象(雇用率は民間と異なる)
– 特例子会社など一部例外あり(要申請・承認)
この「43.5人」という数字は、障害者の法定雇用率2.5%(2024年4月より適用)をもとに算出されています。つまり、従業員44人の企業であれば、最低でも1人の障害者を雇用しなければならないという計算になります。
障害者雇用の義務の背景と根拠
障害者雇用促進法により、障害のある方が職業を通じて社会参加できるよう、一定規模以上の事業主に雇用の義務が課されています。法律の目的は、障害者の自立と社会参加の支援です。
雇用義務に違反すると、次のような行政措置があります:
– 指導・勧告
– 公表(企業名の公表)
– 障害者雇用納付金の徴収(一定規模以上の企業が対象)
よくある誤解:パートやアルバイトはカウントされない?
よくある誤解として、「パートやアルバイトは雇用義務の対象外」と思われがちですが、実際には一定の条件を満たす短時間労働者(週20時間以上かつ継続見込みがある者)は、雇用義務の対象に含まれます。
また、雇用している障害者のカウントも実際には「実雇用率」として報告する必要があり、勤務時間や雇用形態によって0.5人換算となることもあります。正確なカウントには注意が必要です。
実務での注意点とよくあるミス
障害者雇用義務に対応する上での実務的な注意点として、以下のような点が挙げられます:
– 障害者手帳の有無を確認せずに実雇用率にカウントしてしまう
– 障害者の職場環境整備(合理的配慮)が不十分
– 雇用率報告の提出漏れ(毎年6月1日時点での報告義務)
– 特例子会社との連携が不明確
これらのミスを防ぐためには、定期的な内部チェックと、専門家のアドバイスを受けることが有効です。
士業による支援内容とは
障害者雇用に関する制度は複雑で、法改正も頻繁に行われます。社会保険労務士や行政書士といった専門家は、以下のような支援を行っています:
– 法定雇用率の算定・実雇用率の管理
– 雇用率報告書の作成・提出支援
– 障害者雇用に関する助成金・補助金の申請サポート
– 特例子会社設立や連携に関するコンサルティング
– 合理的配慮の提供体制構築支援
これらの支援を受けることで、法令遵守だけでなく、障害者が安心して働ける職場づくりも可能になります。
まとめ:障害者雇用は義務とともに企業の成長機会でもある
障害者雇用の義務は、一定規模以上の企業に法的に課されるものですが、それは単なる負担ではなく、多様性と共生社会の実現に向けた重要なステップでもあります。自社の雇用状況を正確に把握し、制度に則った対応を行うことが、結果的に企業の社会的評価や持続可能性にもつながります。疑問がある場合や不安な点がある場合は、専門家への相談を積極的に活用しましょう。