労務経営ブログ
障害者雇用促進法に違反した場合、どのような罰則がある?企業が知っておくべきリスクと対応策
障害者の雇用を義務付ける「障害者雇用促進法」。企業にとって重要な法令ですが、違反した場合にどのような罰則が科されるのか、具体的に理解している方は意外と少ないかもしれません。本記事では、障害者雇用促進法に違反した際の罰則内容と企業が取るべき対応策について、わかりやすく解説します。
この疑問は、特に人事・総務担当者や、法定雇用率未達の中小企業の経営者から多く寄せられています。罰則があると聞いて焦っている方もいれば、「うちは対象じゃないから大丈夫」と考えている方もいるでしょう。しかし、知らずに違反してしまえば、企業イメージや信頼性を損なうリスクもあります。
では、実際にどのような罰則があるのでしょうか?
法令違反に対する結論:罰則はあるが刑事罰ではない
障害者雇用促進法に違反した場合、刑事罰は基本的に課されません。ただし、以下のような行政措置や経済的ペナルティが存在します。
– 勧告や企業名の公表
– 障害者雇用納付金の徴収
– 労働局からの指導や是正命令
つまり「法令違反=すぐに罰金や逮捕」ではないものの、無視し続ければ企業名が公表されるなど、社会的信用を損なう可能性があります。
違反に対する具体的な措置と根拠
障害者雇用促進法では、常用労働者が一定数以上いる事業主(原則として45.5人以上)に対し、障害者の法定雇用率(令和5年度時点で2.3%)を満たすことが義務付けられています。
この義務に違反した場合、以下の手続きが順に進みます。
1.指導・助言:まずは労働局から法定雇用率未達についての指導や助言が行われます。
2.勧告:改善が見られない場合、厚生労働大臣から「雇用計画書」の作成と提出を命じられます。
3.企業名の公表:それでも改善がなければ、厚生労働省の判断で企業名が公表されることになります。
また、障害者を雇用していない企業(常用労働者100人超)が法定雇用率を下回る場合、1人あたり月額5万円(2023年時点)の「障害者雇用納付金」が徴収されます。
よくある誤解:「うちは小規模企業だから関係ない」は危険
「常用労働者が45人未満だから対象外」と考える企業は多いですが、労働者数が増加すればすぐに適用対象となります。また、雇用率達成が難しい業種でも、合理的配慮を行えば対応可能なケースが多数あります。
さらに「納付金さえ払えば雇用しなくていい」といった誤解も根強いですが、あくまで納付金制度は「雇用努力義務」の一環であり、免除の手段ではありません。
現場での注意点:申告ミスや書類不備にも注意
実務では、以下のようなミスが見受けられます。
– 雇用率計算の誤り(パートタイム労働者のカウント方法など)
– 雇用障害者の適切な申告がされていない
– 雇用計画書の未提出や提出遅延
これらは、結果的に「雇用していない」と誤認され、勧告や企業名公表のリスクにつながります。定期的な内部チェックや、専門家による監査が有効です。
専門家の支援内容:社会保険労務士・行政書士によるサポート
障害者雇用に関しては、以下のような専門家の支援を受けることができます。
– 社会保険労務士:法定雇用率の確認、雇用計画書の作成支援、納付金の対応など
– 行政書士:各種書類の作成、障害者就業支援機関との連携サポートなど
また、ハローワークや地域障害者職業センターと連携し、職場環境の整備やマッチング支援も可能です。
まとめ:違反リスクを回避するために、早めの準備を
障害者雇用促進法に違反しても、即座に罰金や逮捕といった重い刑事罰はありませんが、行政指導や企業名の公表、納付金徴収など、実務上大きな影響を受ける可能性があります。
特に、労働者数が増えてくる企業は、早めに対応体制を整えておくことが重要です。自社の雇用状況を正確に把握し、必要に応じて専門家の力を借りながら、法令遵守に努めましょう。