労務経営ブログ

コロナ禍による障害者雇用枠の退職問題

障害者雇用コンサルタントの若林です。
私は社労士として独立するまで一般企業で10年近く障害者雇用枠で働いていた経験があるので、その時の経験などを基に企業向けに障害者雇用の採用や定着支援、労務問題対応をおこなっています。

今回は今年になって相談が増えてきた「コロナ禍による障害者雇用枠の退職問題」について書いていきます。

私は一般企業向けに退職勧奨や解雇、ユニオン対応などの高度な労働問題を顧問・スポットを含め相談として年間200件以上受けています。新型コロナによる緊急事態宣言などにより飲食店や旅行業だけでなく、さまざまな業界が打撃を受けている状態です。政府も雇用調整助成金などの条件を大幅に緩和し、申請しやすいようにし、金額も大盤振る舞いしていますが、企業経営を続けるには足らないのが現状となっています。そのため、昨年後半からコロナ禍による退職勧奨や整理解雇の相談が急激に増えた印象がありました。これは現在でもあまり変化がない状態となっていますが、今年の夏以降なってから「障害者雇用枠で採用した障害者を雇止めしたり、退職勧奨したい」という相談が少しづつ出てくるようになりました。もちろん今までも障害者雇用であっても雇止めや解雇したいとの相談は一定数ありましたが、原因は経営的な理由というより、通常の問題と同様、企業と本人との間のさまざまな労働問題であり、今回のような経営による整理解雇などではありませんでした。

相談の中で気になるのが「他の従業員を整理解雇するのに、障害者雇用枠で採用している人を残しておくと問題になりまそうだから」という担当者が多いことです。
言わんとしていることはなんとなくわかります。当然、これを本当に言い出す人もいるでしょう。でもこれって結局、障害者を正社員として採用しているのに、正社員として認識していないということになります。

障害者雇用をはじめとした両立支援やノーマライゼーションなどで、障害者や高齢者を採用する企業が増えていますが、採用時の基準内でしか業務を与えられず企業が想定した範囲でしか仕事を与えていないことが多いです。このような形で採用をしたときに、業務内容の変更やキャリアアップ、勤務場所など、通常の労働者に対しておこなっていることを全く考慮しない会社は多く存在します。そのため、採用して何年たっても会社の戦力とされていないなんてことは珍しくありません。そうなると当然、上記のように一般社員とみなされず差別的な発言や対応がされる原因となります。

このようなことを解消するためどうすればいいのか?答えは簡単です。一般社員と同じようにキャリアアップを前提とし、昇格・降格を含めて活用するようにするだけです。
ただし、一般社員と違った注意も必要となります。障害者の中には、自分のできる範囲で社会参加をおこない、その範囲で生活をしたいと希望する人や、障害の状態により一般社員のように働くこと自体が出来ない人もいます。そういった方にこの働き方を求めることは離職に繋がったり、ハラスメントに繋がることになります。これを防ぐためには採用時にしっかりとした希望や障害の状態を確認することだけでなく、採用後にも定期的な面談を通して今後の希望や適性を確認していくことが大切となります。

今後、日本の労働人口は減少をたどります。女性や高齢者とともに障害者についても今以上の社会参加が求められるようになります。そのためにも障害者雇用枠といった義務として採用をするのではなく、会社の戦力となる一社員として採用を考えてほしいと思います。

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