労務経営ブログ

職場環境の配慮義務とハラスメント防止措置における問題点

日本の労働市場において、企業の職場環境への配慮義務とハラスメント防止措置がますます重視されています。しかし、このような義務や措置が整備されつつある一方で、現場での対応が不十分だったり、取り組み自体が形骸化しているケースも多いのが現状です。経営者や人事担当者にとっても、多忙な業務の中で制度の導入だけで満足してしまい、十分に機能していないという問題が少なからず見受けられます。

〇具体的な問題点
1.職場環境配慮義務の認識不足
まず最初の問題として、職場環境配慮義務の本質を理解していない企業が多く存在することが挙げられます。職場環境配慮義務は、従業員が安心して働ける環境を提供するために企業が果たすべき責任ですが、「義務」としての重要性を十分に理解している経営者は限られています。この配慮義務を軽視すると、労働者のパフォーマンス低下やモチベーションの喪失を招く可能性が高く、ひいては企業全体の生産性が低下するリスクもあります。

2.ハラスメント防止措置の形骸化
ハラスメント防止措置に関しても、施策が形骸化していることがよく見られます。多くの企業が法律上の最低限の義務として規程を整備し、研修を実施していますが、その多くが「形式的」なものであり、現場で実際に機能していないことが問題です。例えば研修が年に1回の資料配布にとどまっていたり、従業員にとってハラスメントの具体的な対処方法が曖昧なままであったりするケースが多々あります。これは問題発生時に社内で適切なサポート体制が構築されていない状況を作り出し、従業員がトラブルに巻き込まれた際の不安や不満につながります。

3.経営者と現場との認識のズレ
また経営者と現場の従業員の間で職場環境やハラスメントに対する認識が異なることも、根深い問題です。経営者が配慮義務や防止措置の必要性を理解していても、実際の職場でその理念が十分に伝わっていなかったり、実践されていなかったりする場合があります。特にハラスメントに関する問題は、従業員が声を上げにくい内容も多く、現場の状況が経営層に伝わりにくいことが問題です。こうした「見えない問題」が積み重なると、従業員の信頼を失うだけでなく、社内のコミュニケーションや雰囲気に悪影響を及ぼす可能性があります。

4.ハラスメントの判断基準の曖昧さ
ハラスメントの防止に取り組む企業は増えているものの、何がハラスメントに該当するかについての基準が曖昧であることが問題視されています。多様な価値観を持つ従業員が働く現代の職場では、同じ行為でも受け取り方が異なるため、どの程度の行為が「ハラスメント」と見なされるのかが明確でないと誤解や不満が生じやすくなります。これが原因でハラスメントを防止しようとする企業側の取り組みが中途半端になり、結果的に従業員の満足度や安全意識を下げてしまうこともあります。

5.ハラスメント発生後の対応の不備
最後に、ハラスメントが発生した場合の企業側の対応体制が整っていないケースも多いです。ハラスメントの苦情が寄せられた場合、迅速で適切な対応が求められますが、特に中小企業では専任の相談窓口がない場合や対応方法が曖昧なために問題が放置されることが多いのです。このような場合、従業員が企業に対する不信感を抱きハラスメント被害がさらなる不満や人材流出につながるリスクが高まります。

〇職場環境の配慮義務とハラスメント防止措置に対する放置が生むリスクとは
職場環境の配慮義務やハラスメント防止の取り組みを軽視したままでいると、企業にとって深刻なリスクを招く可能性が高まります。近年、SNSの発達や情報公開の進展によって、職場でのトラブルや不適切な対応は一瞬で世間に広まり、企業の評判に大きな打撃を与えるケースも増えています。もし企業としてハラスメントの問題を「そのうち改善する」「大事にはならない」と考え、先送りにしてしまったらどうなるでしょうか。最悪の場合、従業員の精神的なダメージが訴訟や労働局への申告などにつながり、企業の信頼は一瞬で崩壊するかもしれません。

また職場環境の配慮義務を怠った場合、ハラスメントや職場のストレスによるメンタルヘルス不調者が増え、従業員が次々と休職したり、退職したりすることで人材の流出が加速する危険性もあります。人材は企業の最も大切な資源であり、採用から教育までには大きなコストと時間がかかります。もし重要なポジションにいる社員が退職してしまえば、その穴を埋めるためのコストや業務の停滞、さらには残された社員への負担が増え悪循環が生まれてしまいます。

さらに現在では法令や指針の改正に伴い、ハラスメント対策を講じていない企業には厳しい目が向けられています。とりわけ大企業だけでなく、中小企業にも適用される法律が増加しており、「中小企業だからそこまでしなくていい」という言い訳が通用しない時代です。監督指導が入った場合、対応が不十分であることが指摘されれば企業に改善命令が出されることもありますし、それが是正されない場合には行政罰の対象にもなりえます。企業としてはコンプライアンスを無視できない時代であり、従業員に安全で快適な労働環境を提供することが企業存続の最低限の条件とも言えます。

こうしたリスクに対し、ハラスメント対策や職場環境の改善を行わず放置していると、従業員の不満が高まるばかりか、企業の評判にも大きなダメージが及び、取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。

ハラスメント防止や職場環境の改善には、社外の専門家との連携も有効です。当事務所「社会保険労務士法人東京エルファロ」では、企業の実情に合わせた改善策や研修プランの提供を行っており、問題の根本的な解決をサポートします。具体的な事例を交えたアドバイスを受けることで、組織の問題を一歩踏み込んで解決し、よりよい職場環境の実現が可能です。

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