労務経営ブログ
障害者雇用に使える公的支援と活用ポイント~障害者雇用における公的支援の重要性~
近年、日本では「多様性のある職場づくり」が求められ、障害者雇用の促進が進められています。企業には法的義務として一定割合の障害者を雇用することが求められており、未達成の場合は納付金が発生する仕組みとなっています。しかし、「障害者を雇いたいが、どのように受け入れたらよいかわからない」「雇用後のサポートに不安がある」といった企業の声も少なくありません。
こうした課題を解決するために、国や自治体は企業向けの公的支援制度を整備しています。助成金の支給や専門家によるサポートを活用することで、企業は負担を軽減しながら障害者雇用を進めることができます。ここで、東京都近県の企業向けに、活用すべき公的支援制度とそのメリットについて解説します。
〇障害者雇用が企業に求められる背景
1.法定雇用率の義務化と改正
障害者雇用促進法により、企業には障害者の法定雇用率が定められています。2024年4月には、この法定雇用率が以下のように引き上げられました。
・民間企業:2.3% → 2.5%
・国・地方公共団体:2.6% →2.8%
・都道府県等の教育委員会:2.5% → 2.7%
従業員40人以上の企業は1人以上の障害者を雇用する義務が生じ、未達成の場合は納付金制度(1人当たり月額5万円)の対象となります。
2.企業の社会的責任(CSR)とSDGsの推進
障害者雇用は、単に法的義務を果たすだけでなく、企業の社会的責任(CSR)の一環としても重要視されています。SDGs(持続可能な開発目標)では「働きがいも経済成長も」(目標8)や「人や国の不平等をなくそう」(目標10)といったゴールが掲げられ、企業が障害者の雇用機会を創出することが求められています。
3.人材確保の選択肢としての障害者雇用
少子高齢化が進む日本では、人手不足が深刻化しています。その中で障害者を雇用し、適切な環境を整えることで、企業にとっても貴重な労働力を確保することが可能です。特に東京都近県のような都市部では、企業間の人材獲得競争が激しく、障害者雇用は新たな人材確保の手段としても注目されています。
〇公的支援を活用するメリット
1.助成金・補助金による経済的支援
障害者雇用には、雇用に向けた設備の導入や職場環境の整備、専門スタッフやサポート人材の配置など一定のコストがかかることが多くあります。しかし、国や自治体が提供する助成金を活用することで、これらの費用を抑えることが可能です。例えば、以下のような助成金があります。
・トライアル雇用助成金:障害者を試行的に雇用する際に支給(最大12万円/月)
・特定求職者雇用開発助成金:障害者を継続雇用した場合に支給(最大240万円)
・障害者職場適応助成金:職場環境の改善にかかる費用を補助
2.専門家によるサポートが受けられる
企業が障害者雇用を進める際には、雇用管理や職場環境の整備に関する専門的な知識が求められます。これに対応するため、以下のような支援機関が利用できます。
・ハローワークの障害者就労支援窓口:求人紹介や採用後のフォロー
・東京都障害者就業・生活支援センター:職場定着支援を実施
・職場適応援助者(ジョブコーチ)支援制度:障害者の業務適応をサポート
3.障害者雇用の成功率を高める
適切な支援を受けながら雇用を進めることで、障害者本人の定着率が向上します。特に助成金やジョブコーチ制度を活用することで、雇用側・労働者側の双方にとって働きやすい環境を構築でき、長期的な雇用継続につながります。
障害者雇用は、企業にとって法的義務であると同時に、社会的責任を果たし、人材確保の新たな手段としても有益な方法です。助成金や支援制度を活用することで、負担を軽減しながら障害者の雇用を推進できますが、多くの企業がこういった制度の一部しか使用せずに、負担を抱えている例を多く見てきました。
東京都近県の企業向けには、国の制度に加え、都道府県ごとの独自支援も充実しています。これらの制度を適切に活用し、障害者雇用をスムーズに進めるためには、社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。企業の成長と社会貢献を両立させるために、公的支援制度を積極的に活用していきましょう。