労務経営ブログ

低い評価をつける覚悟が、組織の未来を決める:「標準評価」という名の組織破壊

優秀者が「ダメになる」組織の共通点

2026年1月26日、セレクションアンドバリエーション株式会社の平康慶浩代表が「ちゃんと低い評価をつけるリーダーの覚悟が、組織を自律的に成長させる」と題した記事を公開しました。

この記事を読んだ瞬間、私は「これこそ、中堅企業の人事部門が直面している最大の構造欠陥だ」と確信しました。社会保険労務士として、また外部CHROとして200社以上の人事制度運用を見てきた立場から言えば、「低評価をつけられない管理職」は組織の最大のリスクです。

なぜなら、それは個人の優しさや配慮の問題ではなく、組織を壊す「構造的欠陥」だからです。

記事リンク:https://sele-vari.co.jp/insight/low_rating_organizational_growth/

〇 「無難な評価」が組織に送る破壊的メッセージ

・ 標準評価ばかりつける上司が伝えていること

平康代表の記事では、標準評価ばかりつける組織が部下に送っているメッセージを以下のように指摘しています。

– 何をしてもあなたを高く評価する気はない
– 何が足りないのかを説明するのが面倒だ
– どこを伸ばせばいいのかいちいち説明したくない

これは、私が支援した企業でも繰り返し見てきた現実です。ある中堅IT企業では、優秀な20代社員が3年連続で「標準評価」を受け続け、「どうせ頑張っても変わらない」と判断して転職していきました。

この社員は、決して怠けていたわけではありません。むしろ、合理的に判断しただけです。「頑張っても標準、頑張らなくても標準」なら、余計な労力は使わない。これは自然な反応です。

・ 外部CHROとして目撃した「優秀者がダメになる瞬間」

私が外部CHROとして支援したある製造業では、かつて社内で「エース」と呼ばれた30代社員が、40代になって「お荷物」と呼ばれるようになっていました。

何が起きたのか?彼は10年間、ずっと標準評価を受け続けました。どんな成果を出しても、どんな改善提案をしても、評価は変わらない。その結果、彼の行動は変わりました。

– 余計なことはやらない
– 波風が立つことはやらない
– 失敗リスクのある挑戦はしない

これは怠惰ではありません。組織が「やっても無駄」というメッセージを送り続けた結果です。これが「優秀者がダメになる」正体です。

〇 時間軸判断:短期的な摩擦を避けて、長期的な成長を殺す

・ 低評価をつけられない本当の理由

平康代表は、低評価をつけられない理由を「説明を避けたいから」と明快に指摘しています。まさにその通りです。

低評価をつけると、部下から必ず以下の質問が来ます。
– なぜ低いのか
– どの事実に基づくのか
– 基準は何か
– では何をどう改善すればよいのか
– 上司として何を支援するのか

これに答えるには準備が必要です。日常的に観察し、基準を言語化し、記録し、面談で合意する。多くの管理職が低評価を避けるのは、この負荷があるからです。

・ 私の思想における「時間軸判断」

私の思想では「今の同意・合法性・空気より、将来の持続性と回復可能性を優先する」ことを最上位の判断基準とします。

低評価をつけることは、短期的には摩擦を生みます。面談で反発されるかもしれない。関係がぎくしゃくするかもしれない。上司として「嫌な人」だと思われるかもしれない。

しかし、それを避け続ければどうなるか?組織全体の学習が止まります。部下の成長も止まります。5年後、10年後に「あの時ちゃんと伝えておけばよかった」と後悔することになります。

これが時間軸判断です。短期的な摩擦を恐れて、長期的な成長を殺すのか。それとも、短期的な摩擦を引き受けて、長期的な成長を選ぶのか。

〇 構造設計:低評価を成長につなげる5点セット

・ 感情論ではなく、構造で解決する

低評価をつける覚悟は、精神論ではありません。構造設計の問題です。

平康代表が記事で紹介している「低評価を成長につなげる5点セット」は、まさに構造設計の本質を突いています。

1. ファクトの明確化:観察可能な行動・成果(いつ、何が、どうだったか)
2. 評価基準の明示:期待水準(どの状態なら標準/上位なのか)
3. ギャップの具体化:足りない点は1〜2点に絞る(全部は言わない)
4. 次のアクションの明示:次月/次四半期でやることを具体化する(誰が、いつまでに)
5. 上司の支援内容の明確化:上司が提供する支援を明確にする(機会、時間、レビュー、同行など)

この5点セットがあれば、低評価は「攻撃」ではなく「成長のための情報」になります。この構造がなければ、単なる感情論で終わります。

・ 私が人事制度設計で重視する「是正ルート」

私の思想では「違法か合法かではなく、是正ルートと意味づけが描けるかが重要」としています。低評価も同じです。

完璧な評価など存在しません。重要なのは、評価に誤りがあったとき、部下が納得できないとき、「どう是正するか」「どう対話するか」のルートが設計されているかです。

5点セットがあれば、部下は「どこが足りないのか」「何を改善すればいいのか」を理解できます。上司も「何を支援すればいいのか」が明確になります。これが是正ルートです。

〇 嫌われる覚悟:組織を壊さない側に立つ証明

・ 低評価をつけることは「嫌われ役」を引き受けること

低評価をつければ、当然反発されます。面談は感情的になるかもしれない。「あの上司は厳しい」「やりにくい」と言われるかもしれない。

しかし、それを恐れて逃げれば、部下の成長機会を奪うことになります。私の思想における「嫌われる覚悟」とは、短期的な称賛より、長期的に壊れない選択を取ることです。

嫌われ役を引き受けることも、専門家の重要な機能だと考えています。

・ 結果責任倫理:引き受けられる覚悟があるか

私は「結果責任を引き受けられる覚悟の量」で、施策の価値を測ります。

低評価をつけるなら、その後の面談で反発を受け止め、次のアクションを合意し、支援を提供する覚悟が必要です。この覚悟がないなら、つけるべきではありません。

しかし、覚悟があるなら、つけるべきです。それが専門家としての責任です。結果責任を引き受けられる覚悟があるからこそ、私は自信を持って「低評価をつけるべきだ」と提言できます。

〇 未来耐久性:人が変わっても機能する組織を設計する

・ 「自律的に成長する組織」とは何か

平康代表の記事では、「自律的に成長する組織」を以下のように定義しています。

– 組織が求める基準が明確で
– その基準と現状とのギャップが日常的に確認され
– 次の行動が合意され
– 上司が必要な支援を出し
– 次の評価で改善が検証される

このループが回っている状態です。まさに、これが私の思想における「未来耐久性」です。

・ 人に依存しない構造を作る

私が人事制度設計で最も重視するのは「人に依存しない構造」です。

優秀な上司がいれば部下が育つ。しかし、その上司が異動すれば育成が止まる。これでは未来に耐えられません。

しかし、組織に「低評価を成長につなげる構造」が根付けば、誰が上司になっても機能します。これが未来耐久性です。

人の善意や能力に依存せず、仕組みとして回る設計をする。低評価をつける文化は、その重要な構成要素です。

〇 中堅企業にこそ必要な「低評価をつける文化」

・ 一人ひとりの生産性が業績に直結する

中堅企業は大企業と違い、一人ひとりの生産性が業績に直結します。だからこそ、「無難な評価で組織を壊す」ことは許されません。

限られたリソースで最大の効果を出すためには、一人ひとりが明確な基準を理解し、ギャップを認識し、次の行動を選べる状態を作る必要があります。それが人事戦略です。

・ 人事部門の役割は「構造設計者」である

中堅企業の人事部門に求められるのは、制度を導入することではありません。制度が現場で機能し続ける構造を設計することです。

低評価をつける文化を根付かせるためには、評価者研修、被評価者教育、プロセス設計、HRテックの導入など、多角的なアプローチが必要です。これを怠れば、どんな制度も「絵に描いた餅」で終わります。

〇 障害者雇用の現場で学んだ「構造設計」の本質

・ 善意に依存した制度は、必ず崩れる

私は人工透析患者として10年間勤務した経験があります。また現在、障害者雇用戦略アドバイザーとして、多くの企業の障害者雇用を支援しています。

その現場で痛感するのは「善意や感情を前提にした制度は、必ず崩れる」という事実です。善意は続きません。感情は変わります。だから、人の善意や感情を前提にせず、構造と制度設計で安全と回復を担保する。これが私の基本姿勢です。

・ 評価制度も同じ構造問題

評価制度も同じです。「優しい上司が頑張れば何とかなる」という善意前提の設計では、いずれ崩れます。

低評価をつける文化を構造として設計し、評価者研修で運用を標準化し、プロセスで再現性を担保する。それが未来に耐える人事戦略です。

〇低評価をつける覚悟は、組織の未来に対する責任の引き受け

低評価をつける覚悟は、優しさの欠如ではありません。組織の未来に対する責任の引き受けです。

短期的には摩擦が生じます。しかし、長期的には組織を支え続ける文化になります。中堅企業の人事部門、担当役員の皆様。今こそ、この構造を設計するときです。

私の思想では「思想は実績によってのみ語る資格があり、匿名の思想は価値を持たない」としています。だから私は、実名で、実績を背負って、この提案をします。

低評価をつける文化は、評価制度を未来に耐える構造にするための必須要素です。私は、この提案に結果責任を引き受ける覚悟があります。

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