労務経営ブログ

義理チョコ・ホワイトデーは禁止できるのか? ― 労働法の専門家が考える「職場の贈答慣習」とコンプライアンス

2月のバレンタインデー、
そして3月のホワイトデー。

この時期になると、企業の人事担当者や管理部門の責任者から、毎年のように同じ相談を受けます。

「義理チョコを社内で禁止しても問題ありませんか?」
「ホワイトデーのお返しが負担になっているのですが、ルール化できますか?」

私はこれまで、労働問題に関する相談を2000件以上受けてきました。その経験から申し上げると、

〇法的には、一定の制限は可能です。

しかし、本当に重要なのは「合法かどうか」ではありません。

〇 法的整理:社内贈答を制限することは可能か

企業には「施設管理権」があり、
従業員には「職務専念義務」があります。

業務時間中の私的な贈答や集金行為が、業務の円滑な遂行を妨げると合理的に判断できる場合、社内ルールとして一定の制限を設けることは、原則として許容されます。

また、「虚礼廃止」の観点から、慣習を見直すことも経営判断の範囲内です。

ただし、ここで思考を止めてしまう企業ほど、別の問題を抱えがちです。

〇 バレンタインとホワイトデーが内包するリスク

1.性別に偏った慣習

バレンタインは女性から男性へ、
ホワイトデーは男性から女性へ。

こうした構造を前提とした運用は、ジェンダー配慮の観点から慎重に検討すべきです。

ルールを定める場合は、必ず性別を限定しない中立的な表現にする必要があります。

2.「任意」のはずが、実質的な強制に

・みんながやっているから断れない
・上司に渡さないと気まずい
・お返しをしないと評価に影響しそうだ

こうした心理的圧力は、ハラスメント問題に発展する可能性があります。

実際に、ホワイトデーのお返しを巡って人間関係が悪化した事例の相談を受けたこともあります。

形式的には任意でも、
実質的に強制になっていないか。

ここを見落とすと、企業のハラスメント対策全体の信頼性に影響します。

3.懲戒処分のリスク

禁止ルールを設けた場合でも、違反者に対して直ちに重い懲戒処分を科すことは適切ではありません。

懲戒処分は、「目的の正当性」と「手段の相当性」が求められます。

軽微な行為に対して過度な処分を行えば、懲戒権濫用として無効と判断される可能性があります。

段階的な対応が原則です。

〇 小さな慣習こそ、組織の成熟度を映す

バレンタインやホワイトデーは、経営課題としては小さな論点に見えるかもしれません。

しかし、私はこうした「小さな慣習」への向き合い方に、企業のコンプライアンス成熟度が表れると考えています。

・心理的安全性をどう守るか
・ジェンダー配慮をどう制度化するか
・業務時間の価値をどう考えるか

これは単なるイベントの問題ではなく、組織設計の問題です。

〇 企業として取るべき実務対応

実務上は、次のような対応を推奨しています。

1. 性別を限定しない中立的なルール表現
2. 業務時間中の私的贈答を原則控えるという整理
3. ハラスメント防止の観点を明示
4. 違反時は段階的対応とする
5. 見直しの目的を経営メッセージとして明確にする

禁止するかどうか以上に、
**どう説明し、どう運用するか**が重要です。

〇 まとめ

義理チョコやホワイトデーの問題は、単なる季節行事の話ではありません。

そこには、

・職場文化
・ジェンダー意識
・心理的安全性
・コンプライアンス体制

が凝縮されています。

小さな慣習を軽視しない企業ほど、大きな労務トラブルを未然に防いでいます。

もし貴社で、

・社内慣習の見直しを検討している
・服務規程をアップデートしたい
・ハラスメントリスクを事前に点検したい

とお考えであれば、一度現行規程と運用の整合性を確認することをお勧めします。

社労士法人東京中央エルファロでは、
合法性の確認にとどまらず、「実務で機能する制度設計」まで含めた支援を行っています。

小さな論点のうちに、整備する。
それが、結果的に企業を守る最短ルートです。

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