労務経営ブログ
三井住友銀行が年功序列を完全廃止!30代で年収2割増、20代で2000万円も|中小企業が学ぶべき人事制度改革の本質
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1. 歴史的改革:四半世紀ぶりの人事制度大転換「ステージ」とは
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2026年1月、三井住友銀行が四半世紀ぶりに人事制度を抜本的に改定します。新人事制度の名称は「ステージ」。この改革は、日本の大企業における人事制度改革の歴史的転換点となる可能性があります。
【何が変わるのか?】
一言で言えば、「年齢や勤続年数ではなく、役割と能力で評価・報酬が決まる」仕組みへの完全移行です。
従来の銀行では:
• 入社年次に応じて昇進する「階層制度」
• 55歳で自動的に給与が下がる「専任行員制度」
• マネジメント職を目指すのが王道
• ゼネラリストが重用される文化
これらすべてを見直し、実力本位・専門性重視の評価軸へと大転換するのです。
【インパクトの大きさ】
• 30代前半の管理職で年収最大2割増
• 20代でも年収2000万円が可能
• シニア層の一律減給も撤廃
• スペシャリストが最上位グレード(ダイレクター)に到達可能
メガバンクという日本を代表する大企業が、ここまで踏み込んだ改革を断行することは、他の業界にも大きな影響を与えるでしょう。
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2. 改革の3つの柱:年功序列完全廃止の衝撃
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新人事制度「ステージ」の3つの柱を詳しく見ていきましょう。
【柱1:階層制度の完全廃止】
これまで三井住友銀行では、入社年次を給与に反映する「階層」という仕組みがありました。入社〇年目なら〇等級、というように、年功的な昇進が基本でした。
新制度では、この階層を完全に廃止します。
代わりに導入されるのが:
• 銀行業務を50の領域に分類
• 各領域で求められる役割を明確化
• 役割に応じて報酬が決まる
つまり、「何年目か」ではなく「どんな役割を担っているか」「どれだけの成果を出しているか」で給与が決まるのです。
これにより:
✓ 優秀な若手社員の大胆な抜擢が可能に
✓ 30代前半の管理職で年収最大2割増
✓ 20代でも高度な専門性を発揮すれば年収2000万円が視野に
年齢の壁が取り払われることで、真の実力主義が実現します。
【柱2:シニア層の一律減給撤廃】
従来、三井住友銀行では55歳になると「専任行員」という区分になり、給与が自動的に引き下げられる仕組みがありました。
これは多くの日本企業で見られる「役職定年」と同様の制度で、年齢を理由に一律で処遇を下げるものです。
新制度では、この専任行員制度も撤廃されます。
つまり:
• 55歳以降も役割と能力次第で高給を維持できる
• ベテランの経験とスキルを正当に評価
• エイジズム(年齢差別)の排除
これは、人生100年時代における人材活用の観点からも極めて重要な改革です。
【柱3:スペシャリストとゼネラリストの平等評価】
従来の銀行では、支店長や役員といったマネジメント職を目指すのが王道とされてきました。さまざまな部署を経験して幅広い業務を学ぶゼネラリストタイプが重用されてきたのです。
しかし、銀行ビジネスの専門化・高度化が進んだことで、IT、データサイエンス、デジタルマーケティング、リスク管理などの専門性を持ったスペシャリストの重要度が増してきました。
新制度では:
• マネジメント層と並ぶ最上位グレード(ダイレクター)にスペシャリストも到達可能
• 専門性を正当に評価する仕組み
• 中途採用の専門人材も公平に処遇
「マネジメントが偉い」という固定観念を打破し、多様なキャリアパスを認める制度設計です。
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3. なぜ今、この大改革なのか?CHROが語る2つの課題
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三井住友フィナンシャルグループの小林喬CHRO(最高人事責任者)は、東洋経済オンラインのインタビューで改革の背景を語っています。
【課題1:専門人材の処遇問題】
「中途採用で入社してきた専門人材から、『ゼネラリストタイプが重用され、自分たちが割を食っているのではないか』という声が上がっていた」
これは多くの日本企業が抱える共通の課題です。
近年、デジタル化やグローバル化の進展により、高度な専門性を持った人材の重要性が増しています。しかし、従来の年功序列的な人事制度では、こうした専門人材を正当に評価・処遇することが難しいのです。
その結果:
• 優秀な専門人材が外資系企業やスタートアップに流出
• 中途採用で獲得した人材が定着しない
• 内部の専門性を持った社員のモチベーション低下
こうした問題を解決するため、スペシャリストを正当に評価する仕組みが不可欠になったのです。
【課題2:多様性への対応】
「価値観が多様化していく中で、決められた目標に向かってチーム一丸となって戦うというDNAを大切にしながらも、多様な価値観を受け入れられる会社にしなければならない」
これも重要な視点です。
従来の銀行では:
• 均質な新卒一括採用
• 全員が同じキャリアパスを歩む
• 「銀行員らしさ」への同調圧力
こうした画一的な組織文化が強みであった一方で、多様性の欠如という弱みにもなっていました。
しかし現代では:
• ワークライフバランスを重視する人
• 専門性を極めたい人
• マネジメントを目指す人
• 転勤したくない人
など、多様な価値観を持った人材を受け入れ、活かすことが組織の競争力につながります。
新人事制度「ステージ」は、こうした多様性を認め、それぞれの強みを活かせる仕組みなのです。
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4. 人件費100億円増:本気の投資が示す覚悟
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「評価制度を変えても、給与総額が変わらなければ意味がない」という指摘があります。確かに、パイを再配分するだけでは、優秀な人材に報いることはできません。
三井住友銀行は、この点も明確にしています。
【人件費を中期的に100億円規模で増加】
これは、従業員数から計算すると少なくとも3%以上の増加に相当します。
つまり:
• 単なる「配分の変更」ではない
• 優秀な人材にしっかり報いるための「投資」
• 給与総額のパイを拡大する
という明確なメッセージです。
【2026年度は10%超の賃上げ】
さらに、2026年度には実質10%超の賃上げを実施する方針も表明されています。ベースアップ(ベア)は前年度の2.5%から4%となり、4年連続のベア実施となります。
これは:
• 物価上昇への対応
• 優秀な人材の獲得競争への対応
• 従業員への利益還元
という多面的な意味を持っています。
【本気の覚悟】
人件費100億円増と10%超の賃上げ。この数字が示すのは、三井住友銀行の「人材への本気の投資」という覚悟です。
単に制度を変えるだけでなく、実際に報酬を上げる。この姿勢が、従業員の信頼を生み、優秀な人材を引き付けるのです。
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5. 中小企業が今すぐ実践すべき5つのアクション
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「メガバンクだからできる」と思考停止してはいけません。三井住友銀行の改革から、中小企業が学ぶべき本質を抽出し、実践可能なアクションを提示します。
【アクション1:評価軸を「年齢・勤続年数」から「役割・能力」へ】
完璧な制度設計は必要ありません。まずは方針を明確にすることが重要です。
具体的には:
• 「当社は年齢や勤続年数ではなく、役割と能力で評価します」という方針を明文化
• 経営者から全社員へメッセージを発信
• 就業規則や評価制度に反映
この方針を示すだけで、特に若手社員や中途採用者のモチベーションは大きく変わります。
【アクション2:若手社員の抜擢事例を作る】
制度以上に重要なのは「実績」です。
具体的には:
• 優秀な20代・30代社員を管理職に抜擢
• プロジェクトリーダーに若手を任命
• 社内報やミーティングで抜擢事例を共有
「この会社では年齢に関係なく活躍できる」というメッセージを、具体的な事例で示すことが重要です。
【アクション3:専門性を評価する仕組みを作る】
中小企業でも、IT、マーケティング、経理、人事など、専門性を持った人材は存在します。
具体的には:
• マネジメント職以外のキャリアパスを明示
• 専門職手当や専門職グレードの導入
• 外部資格取得の支援と評価への反映
「マネージャーにならなくても、専門性で高い報酬を得られる」という道を示すことで、多様な人材が活躍できます。
【アクション4:シニア層の一律減給制度を見直す】
多くの中小企業で、「〇歳になったら給与を下げる」という制度があります。
これは:
• ベテラン社員のモチベーション低下
• 経験豊富な人材の能力を活かせない
• エイジズム(年齢差別)
という問題を引き起こします。
見直しの方向性:
• 年齢による一律減給を廃止
• 役割と能力に応じた処遇に変更
• ベテラン社員の専門性を活かすポジションを創出
【アクション5:人材への投資を惜しまない姿勢を示す】
三井住友銀行の人件費100億円増が示すように、本気で人材を大切にするなら、投資が必要です。
中小企業ができること:
• 賃上げの実施(できる範囲で)
• 優秀な人材への賞与上乗せ
• 研修・教育への投資
• 福利厚生の充実
「この会社は人材を大切にしている」というメッセージを、具体的な行動で示すことが重要です。
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6. まとめ:年功序列からの脱却が組織の未来を変える
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三井住友銀行の人事制度改革「ステージ」は、日本企業が目指すべき方向性を示しています。
【この記事のポイント】
✓ 2026年1月、四半世紀ぶりの人事制度大改革
✓ 階層制度の完全廃止:年齢ではなく役割と能力で評価
✓ シニア層の一律減給も撤廃:ベテランの力を活かす
✓ スペシャリストを最上位グレードに:専門性の正当評価
✓ 人件費100億円増:本気の人材投資
✓ 中小企業も実践可能な5つのアクション
【メガバンク全体の動き】
三井住友銀行だけでなく、三菱UFJ銀行、みずほ銀行もそれぞれ人事制度改革を進めています。メガバンク3行が同時期に改革を進めることで、銀行業界全体、ひいては日本企業全体の人事制度に大きな影響を与える可能性があります。
【Job総研調査との関連】
前回ご紹介したJob総研の調査では、人事評価への不満が69.6%、転職検討が65.5%という結果が出ていました。
つまり、従来型の年功序列的な評価制度では、優秀な人材が流出してしまうのです。
三井住友銀行の改革は、この問題への一つの解答と言えるでしょう。
【中小企業こそ、今すぐ動くべき】
「メガバンクだから」「大企業だから」と他人事にしてはいけません。
むしろ、人材不足に悩む中小企業こそ、「年齢に関係なく、能力と貢献度で評価する」という明確なメッセージを発信することが、優秀な人材の獲得・定着につながります。
完璧な制度を目指す必要はありません。
今日からできる小さな一歩:
• 評価方針の明文化
• 若手社員の抜擢
• 専門性の評価
• シニア層の活用
• 人材への投資
これらを一つずつ実行していくことで、組織は確実に変わります。
【最後に】
四半世紀ぶりの大改革に踏み切った三井住友銀行の決断は、日本企業の人事制度改革の大きな転換点になるでしょう。
年功序列からの脱却。
実力主義の徹底。
多様な人材の活用。
人材への本気の投資。
これらは、すべての日本企業が取り組むべき課題です。
人事労務の専門家として、貴社の実情に合わせた人事制度改革をサポートいたします。お気軽にご相談ください。
年功序列からの脱却が、組織の未来を変える。
【参考資料】
• 東洋経済オンライン「『年功序列』を廃止する三井住友の人事制度改革」
• 日本経済新聞「三井住友銀、30代管理職で年収最大2割増 年功序列全廃」
• 三井住友フィナンシャルグループ「価値創造を支える人材戦略」
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【記事URL】
https://toyokeizai.net/articles/-/913536




