労務経営ブログ
障害者雇用で法律に抵触する可能性のあるNG質問とは?
障害者雇用の面接では、応募者の適性や業務遂行能力を見極めることが重要ですが、一方で、法律に抵触する可能性のある質問を避けることも大切です。企業側に悪意がなくても、意図せず不適切な質問をしてしまうと、障害者差別につながるリスクがあります。ここでは、「障害者差別解消法」や「雇用対策法」に基づいた面接時の注意点と、NG質問を防ぐための具体的な方法について解説します。
〇障害者差別解消法・雇用対策法に基づく注意点
障害者雇用に関連する法律として、「障害者差別解消法」と「雇用対策法」があります。これらの法律を理解し、適切な対応を行うことで、企業側も法的リスクを回避し、障害者が安心して働ける環境を提供できます。
1.障害者差別解消法とは?
障害者差別解消法(正式名称:「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)は、障害者に対する不当な差別を禁止し、合理的配慮を求める法律です。企業が特に気を付けるべきポイントは以下の2つです。
【不当な差別的取り扱いの禁止】
・障害を理由に採用を拒否することは禁止されています。
・障害者に対して、他の応募者と異なる不利な条件を設定することも禁止されています。
【合理的配慮の提供】
・障害のある人が働きやすいように、適切な配慮を行う義務があります。
・例えば、聴覚障害者には筆談や手話通訳の提供、車椅子利用者にはバリアフリー環境の整備などが求められます。
2.雇用対策法とは?
雇用対策法(正式名称:「雇用対策法」)では、企業が採用の際に「公正な機会を提供すること」を求めています。この法律に基づき、以下のような質問は避けるべきとされています。
【家族構成や結婚の予定に関する質問】
・宗教や信条に関する質問
・出身地や家庭環境に関する質問
障害者雇用においても、「障害の程度」や「治療の詳細」などを過度に尋ねることは、応募者にプレッシャーを与え、不適切な対応とみなされる可能性があります。
〇「意図せずNGになる質問」を防ぐ方法
企業側に悪意がなくても、意図せずNGとなる質問をしてしまうことがあります。これを防ぐためには、以下のポイントに注意しましょう。
1.障害そのものではなく、「業務遂行能力」に焦点を当てる
障害の詳細を聞くのではなく、「仕事を遂行するうえで必要な配慮」を確認することが重要です。
【NG質問】あなたの障害について詳しく教えてください。」
【適切な質問】:「業務を遂行するうえで、必要な配慮があれば教えてください。」
このように、質問の仕方を変えるだけで、応募者が安心して答えられる環境を作ることができます。
2.プライバシーに関わる質問を避ける
障害者の健康状態や治療内容は、個人情報にあたるため、面接で詳しく尋ねることは避けましょう。
【NG質問】:「持病の治療は続けていますか? 通院の頻度は?」
【適切な質問】:「勤務時間や業務量について、ご希望があれば教えてください。」
応募者のプライバシーに関する情報ではなく、業務に関連する内容に焦点を当てた質問を心がけましょう。
3.応募者の負担にならない聞き方をする
面接では、応募者にプレッシャーを与えないよう、できるだけリラックスした雰囲気を作ることが大切です。
【NG質問】:「障害のために、仕事がうまくいかなかったことはありますか?」
【適切な質問】:「過去の仕事で、特にやりがいを感じた業務はどのようなものでしたか?」
「できないこと」ではなく「できること」に焦点を当てることで、応募者のモチベーションを引き出し、よりポジティブな雇用につなげることができます。
4.面接官向けの研修を実施する
企業内で面接官向けの研修を実施し、適切な質問とNG質問について学ぶ機会を設けることも効果的です。
・障害者雇用に関する法律とルールを理解する
・NG質問の事例を共有し、適切な質問に言い換える方法を学ぶ
・面接時のシミュレーションを行い、実践的なスキルを身につける
こうした取り組みを行うことで、面接官が適切な対応を取れるようになり、障害者雇用の成功率を高めることができます。
〇まとめ
障害者雇用の面接では、法律を正しく理解し、応募者にとって負担にならない質問を心がけることが大切です。
・「障害者差別解消法」や「雇用対策法」に基づいた適切な対応を行う
・業務遂行能力に焦点を当て、プライバシーに関わる質問を避ける
・応募者がリラックスできる環境を作る
・面接官向けの研修を実施し、適切な質問のスキルを向上させる
適切な質問を行うことで、応募者が安心して面接に臨めるようになり、企業と応募者双方にとって良い結果を生み出すことができます。障害者雇用を円滑に進めるために、企業としての配慮を徹底し、より良い職場環境を築いていきましょう。