労務経営ブログ
企業はテレワークをどう判断すべきか?
テレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大を機に急速に普及しましたが、社会が通常の状態に戻るにつれて、「今後もテレワークを継続すべきか?」と悩む企業が増えています。
完全に出社勤務に戻す企業もあれば、テレワークを維持する企業、あるいは出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークを導入する企業もあります。しかし、どの選択が正解かは、企業の業種や業務内容、従業員の働き方によって異なります。
そこで本記事では、企業がテレワークを見直す際の重要なポイントとして、
1.企業ごとに異なる最適なテレワークの形を見つけることの重要性
2.労務管理や生産性向上の視点を踏まえた柔軟な運用の必要性
この2点について詳しく解説します。
1.企業ごとに異なる最適なテレワークの形を見つけることが重要
(1)業務内容に適したテレワーク制度を構築する
テレワークの適用範囲は、企業や職種によって大きく異なります。例えば、以下のような業種・職種では、テレワークの導入しやすさが異なります。
〇テレワークに適した業務
・IT関連(プログラマー、デザイナー、マーケターなど)
・事務職(経理、総務、人事など)
・コンサルティング業務
〇出社が必要な業務
・製造業(工場での生産業務)
・小売・飲食業(接客、販売、調理など)
・医療・介護業(患者対応、現場業務)
このように、テレワークが可能な業務とそうでない業務があるため、企業は業務内容に応じて、「どの職種でどこまでテレワークを認めるのか?」を明確にすることが重要です。
(2)テレワークの継続・廃止・部分導入の選択肢を検討する
テレワークの運用方法は、主に以下の3つに分類されます。
① 完全出社に戻す
➡ 労務管理やコミュニケーション面の課題を解決しやすいが、従業員の負担が増える可能性あり。
② 部分導入(ハイブリッドワーク)
➡ 出社とテレワークを組み合わせることで、柔軟性と業務効率のバランスを取る。現在、最も多くの企業が採用。
③ 完全テレワークを継続する
➡ 全国・海外の人材を採用しやすいが、適切な労務管理や評価制度の見直しが必要。
どの形を選ぶかは、企業の方針や事業戦略、人材の確保・定着といった観点を考慮しながら慎重に判断する必要があります。
2.労務管理や生産性向上の視点を踏まえた柔軟な運用がカギ
テレワークを継続する場合、企業が抱える大きな課題の一つが労務管理です。また、従業員の生産性を維持・向上させるための仕組みも整える必要があります。
(1)労務管理の課題と解決策
テレワークの労務管理では、以下のような問題が発生しやすくなります。
・勤怠管理が難しい
➡ 【解決策】勤怠管理システム(ジョブカン、KING OF TIME など)を導入し、勤務時間を可視化する。
・長時間労働のリスク
➡ 【解決策】上限労働時間を明確にし、定期的なチェックを行う。
・従業員の健康管理が難しくなる
➡ 【解決策】定期的なオンライン面談やメンタルヘルスサポートを実施する。
これらの課題に対応するためには、テレワークに適したルールを策定し、システムを活用しながら適切な管理を行うことが必要です。
(2)生産性向上のための取り組み
テレワークでは、従業員が自律的に業務を進めることが求められます。そのため、企業は以下のような施策を導入することで、生産性の維持・向上を図ることができます。
〇オンラインミーティングの最適化
・長時間の会議を避け、短時間で効率的に進める
・定例ミーティング(デイリースタンドアップミーティングなど)を導入し、進捗を共有
〇評価制度の見直し
・成果主義に偏らず、プロセスも評価する制度を整備
・360度評価を取り入れ、従業員同士のフィードバックを活用
〇チームコミュニケーションの強化
・バーチャルオフィスツール(oVice、Gatherなど)の活用
・オンライン雑談会やバーチャルランチを開催し、交流機会を増やす
これらの施策を導入することで、テレワークのメリットを活かしながら、組織全体の生産性を高めることが可能になります。
3.企業は柔軟なテレワーク戦略を採用するべき
テレワーク制度を見直す際には、企業ごとに最適な形を見つけることが重要です。
・業務内容や職種ごとに、テレワークの適用範囲を検討する
・完全廃止・部分導入・完全テレワークの3つの選択肢を比較し、適切な形を選ぶ
・労務管理の仕組みを整え、生産性向上につながる施策を導入する
特に、現在多くの企業が採用している「ハイブリッドワーク」は、テレワークと出社勤務のメリットを活かせる柔軟な働き方として注目されています。
企業の規模や業務内容、従業員のニーズに応じて、最適な働き方を模索し、適切なルールを整備することが、今後の企業成長につながる鍵となるでしょう。
テレワークの導入や見直しを進める際は、労務管理や法令遵守の観点から、社労士のサポートを受けながら制度設計を進めることをおすすめします。