労務経営ブログ
東京都近県での成功事例紹介
障害者雇用に取り組むにあたり、多くの企業が「本当にうまくいくのか?」という不安を抱えます。しかし、東京都近県には、工夫と支援を重ねることで、障害者雇用を単なる義務から「組織力強化」へと転換させた企業の成功事例が数多く存在します。
ここでは、実際にあった中小企業の成功事例と、社会保険労務士が支援して「重荷」から「戦力化」へ導いたプロセスをご紹介します。
〇中小企業が障害者雇用で成果を出した取り組み
東京都近県には、製造業、IT業、サービス業など多様な中小企業が存在しています。こうした企業は、大企業に比べてリソースが限られているため、障害者雇用には慎重になりがちですが、正しい取り組みを行えば、むしろ中小企業ならではの柔軟性が成功につながることもあります。
・ケース①:神奈川県・製造業(従業員50名)
ある精密部品製造会社では、障害者雇用に長らく二の足を踏んでいました。理由は、「製造現場は危険が多く、障害のある方を働かせるのは難しいのでは」という懸念でした。しかし、業務の棚卸しを行った結果、製造工程のうち、製品検品、梱包、出荷準備といった安全性が高く、かつ反復作業が中心の業務があることが判明しました。
これらの業務を切り出し、知的障害のある方2名を雇用。作業マニュアルをビジュアル中心に作成し、段階的な指導体制を整備しました。結果、通常業務を圧迫することなく、作業品質が安定。従来はパート社員に頼っていた業務の一部を内製化でき、コスト削減にもつながりました。
経営者は「最初は不安しかなかったが、適切な業務を任せることでここまで力になってくれるとは思わなかった」と話しています。
・ケース②:千葉県・IT企業(従業員30名)
IT企業では、障害者の採用に不安を抱きながらも、精神障害を持つエンジニア経験者を採用しました。採用にあたっては、業務内容を細かく区分けし、在宅勤務制度を整備。業務成果をタスク単位で管理し、成果主義を徹底することで、障害に対する特別扱いをすることなく、他の社員と同様に評価を行う体制を作りました。
その結果、障害を持つ社員は、集中力と専門性を活かして開発業務で高い成果を上げ、チーム内でも重要な戦力に成長。社員のダイバーシティに対する意識も向上し、社内の働き方改革が一気に進むという副次的効果も得られました。
〇社労士が支援した「重荷」から「戦力化」へのプロセス
障害者雇用に成功した企業には、共通して「正しいプロセス設計」がありました。ここでは、社会保険労務士が実際に支援したプロセスを具体的に紹介します。
・ステップ1:現状分析と業務整理
最初に取り組むべきは、企業内の業務整理です。
「障害者にできる仕事がない」という企業も、業務を細かく棚卸しすると、書類整理、データ入力、在庫管理、清掃など、実は障害者が担える業務が見つかることがほとんどです。
社労士はこの業務整理を支援し、適切な職域の創出をアドバイスします。加えて、合理的配慮が必要な場面と、特別な配慮が不要な場面を明確に区別することで、過度な不安を取り除いていきます。
・ステップ2:採用プロセスとマッチング支援
業務設計ができたら、次は適切な人材探しです。
社労士はハローワークや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などと連携し、企業のニーズに合った障害者人材の紹介を支援します。
さらに、採用前に「職場体験実習」を活用する提案も行います。実習によって、企業側・障害者側双方が適性や業務イメージを確認できるため、ミスマッチを防ぐ効果があります。
・ステップ3:受け入れ体制整備と職場環境づくり
採用後は、受け入れ体制づくりが重要です。
ここでは以下のような取り組みを行います。
– 障害特性に応じたマニュアル作成
– 現場での管理職や担当者への障害理解研修の実施
– コミュニケーション方法の工夫(チャット、ホワイトボード使用)
– 定期面談・フォローアップ体制の構築
これらにより、障害者本人だけでなく、周囲の社員も安心して働ける環境を整えます。
・ステップ4:助成金・支援制度の活用
障害者雇用に伴うコストを軽減するために、各種助成金の申請をサポートします。
たとえば、「特定求職者雇用開発助成金」などを活用することで、雇用初期の負担を大きく減らすことが可能です。
さらに、障害者雇用納付金制度への対応や、外部支援機関との連携によるトラブル防止策もあわせてサポートします。
〇まとめ
東京都近県の中小企業でも、正しい取り組みと適切なサポートがあれば、障害者雇用は「重荷」ではなく「企業の力」へと変わります。
重要なのは、現状を正しく分析し、外部の力を借りながら、無理のない範囲で一歩ずつ進めること。
社会保険労務士は、障害者雇用を単なる法令遵守ではなく、企業成長戦略の一部とするための伴走者です。
障害者雇用を通じて、組織の多様性を高め、企業価値を向上させる――そんな未来をともに目指していきましょう。